Kuro

呪怨:呪いの家のKuroのレビュー・感想・評価

呪怨:呪いの家(2020年製作のドラマ)
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<ようこそ、悍ましき呪いの家へ。>

呪いの家。
そこに住むor関わってしまうと善人だろうが悪人だろうが呪われてしまう。圧倒的な理不尽さは呪怨シリーズ特有だが、これまでとは違う味わいの理不尽さ。

4話…。よくここまで描いたよ…。実際に起きた事件のインスパイアなのも加わって本当に本当に悍ましいです。

今作は往来の「呪怨」らしくない。自分の「呪怨」イメージは、白塗り幽霊母子が縦横無尽に飛び出すジャンプ・スケア映画(子供の頃は本気で怖かった。ていうか今でも普通に怖い。)というイメージだったが、今作は白塗りの幽霊のような者は“ほぼ”出てこず、むしろ生身の人間がレイプや殺人の非人道的行為を巻き起こす。そしてブラウン管テレビにも、1988年、1995年、1997年に起こった実際の猟奇事件ニュースが映されていく。今まで「呪怨」というフィクション世界だからこそ一定のラインを越えずに見れていた作品世界が、現実と交わってしまうことで、いよいよ逃れようのない恐怖を呼び起こす。

後半からの唐突に時系列がシャッフルされ時空を越えるシステムは、過去の「呪怨」シリーズのオマージュか。これを使って、今作でも視聴者を混乱の渦に巻き込み出口のない迷路へと閉じ込める構造は「呪怨」らしい。

「呪怨:呪いの家」の恐ろしさは、カヤコやトシオと違い、基本的に直接手を下さないこと。家に関わった人間はいつの間にか精神が破滅していき、残忍な事件を起こしてしまう。身近に起こり得る恐怖だからこそ、ゾッとする。

世界には多くの猟奇事件があり、我々には犯人の気持ちなど到底理解できないが、この作品では、その犯人たちがいつの間にか穢れに触れていて、それが原因で残忍な事件が起きたとしたら?という解釈のように感じられた。

その一方で、やはり今作で最も恐ろしいのは生身の人間による非人道的行為であった。残忍な事件→原因は呪いの家→しかしその呪いを産み出したのもまた残忍な事件という、負の循環構造が抜け出せない恐怖を示している。

ラストも霊的な怖さではなく、人間の怖さを彷彿とさせる。

<小田島や、不動産屋の佐々木は何故、生きているのか。

…いや、“生かされている”のか。

呪いは伝染していく。

伝える者がいる限り…。>
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