かず

呪怨:呪いの家のかずのネタバレレビュー・内容・結末

呪怨:呪いの家(2020年製作のドラマ)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

全6話で1話30分未満という短さのため一気見してしまった。

Netflix大傑作ドラマ『ホーンティング・オブ・ヒルハウス』を想起させる映像による恐怖表現が見事。ホラー苦手な自分としては、大きな音を出して怖がらせる(というよりビックリさせるだけ)ような邪道の恐怖表現が無いのがよかった。
ライティング、被写界深度、見間違いのように一瞬"何か"が映り込むような撮り方は、『死霊館』シリーズや『ヘレディタリー』にも通じる。だからこそ、ジワジワと浸食してくるような後に引く怖さがある。
一連の事件が時空を超えて収束するEP5に震えた。

『きみの鳥はうたえる』で見事な手腕を発揮した三宅唱監督& 撮影監督・四宮秀俊の今後がさらに楽しみ。

本作で酷過ぎるほどの仕打ちを受け、その後何の救いもない聖美の女子高生から母親までを演じきった里々佳は今後大注目の女優だろう。

聖美の受ける被害の酷さには目を背けたくなるが、安易に救いを与えて視聴者を安心させカタルシスを与えるよりも誠実なのではないか。現実には、聖美のように酷い被害を苦しむ女性がたくさんいるのだから。

本当なら褒めてここで終わりたいが、
終始、無視できないノイズがあるため、手放しで称賛できない。



007の脚本リライトを担当したフィービー・ウォーラー・ブリッジが言ったように、作品内の人物がミソジニストであっても、作品自体(作り手)が女性キャラをミソジニスト的に扱ってはならない。

日本に蔓延るミソジニーを描くならば、作り手は現代のフェミニズム視点を取り入れるべきだっただろう。
レイプされ、DV被害にあい、徹底的にどん底に突き落とされる聖美が、レイプ犯であり夫となる男を殺す加害者として描かれ、その後に何のフォローがないし、全体的に女性の描き方が古い。聖美が無責任な人間として描かれてしまっているように見えるもの、少し描き方を注意した方が良いと思う。
また、第一話で聖美がレイプされる引き金を引くのが、女性であることもどうなのだろう?女性の足を引っ張るのは女性であるということだろうか?現実には、男性が足を引っ張ったり抑圧することの方が圧倒的に多いと思うが。
以上の点で、本作は非常に残念な作りになってしまっているように感じる。

Netflix Japanはちゃんとした社会学的歴史学的な知見のあるアドバイザーをつけるべきだろう。
一連のNetflix Japanの実写ドラマ作品を見て思うが、Netflix Japanは機能していないのだろうか。ある程度はレビューした方が良いと思う。
このような時代遅れの作品を作っていては、Netflix自体の格が落ちてしまうのではないかと心配。

話や見せ方がおもしろいし俳優陣も良いし技術的にも頑張って良いものができたと思うが、『國民の創生』の歴史的背景を初めて知った時のような残念な気持ちになった。

技術的レベルは高いと思うので、思考をアップデートしてより現代的な作品を作ってほしい。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

・話題のNetflixドラマ『呪怨:呪いの家』一瀬プロデューサーに聞く「色々な事件も含めて、この時代の闇が浮き彫りになるといいなと思った」2020.07.13 21:00 by 藤本エリ
https://horror2.jp/40738

・Netflixで『呪怨』シリーズ初ドラマ化! ドス黒い日本犯罪史とシンクロする恐怖『呪怨:呪いの家』
https://www.banger.jp/drama/35391/

・2020-07-05 Netflix「呪怨 呪いの家」はおっさんマインドに呪われた家だった
https://pokonan.hatenablog.com/entry/2020/07/05/055401
"レイプしてきた男利用して母親殺す度胸がある女が、なんでずっとこの男と一緒にいて大人しく殴られてんだ。てか、あんな美人で打算的ならマシな男引っ掛けられるだろ"

・「ミソジニー」って最近よく聞くけど、結局どういう意味ですか?
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/70296?page=3
"著者は、ミソジニーを、「素朴理解」ではなく、「家父長制秩序を支える機能をもつ」「人を支配するためのシステムの一形態」として理解するべきだと主張する。
著者によれば、家父長制とは、社会や時代によってさまざまに異なった制度であるものの、「女性という女性、またはほとんどの女性を、その内部の特定の男性あるいは男性たちとの関係において隷属的な立場に置く」ような制度であるという。"
"個人の心理の中に「嫌悪」という心理的傾向が存在することも、要件ではなくなる。家父長制に従っている女性に対して、好意を寄せたり、称賛したりすることも、ミソジニーとして解釈できるのだから、「嫌悪」以外の心理的傾向を持つ行為者の行為にも適用できるだけでなく、いかなる感情を持つこともなくなされる行為であっても、制裁として機能する行為であれば、ミソジニーとして解釈できる。"
"詳しくは後述するが、つまりこうした事件は、「家父長制秩序の下にあれば、男性に付き従うべき女性が、男性である自分になびかなかった」という理由で殺人を犯した事件と位置付けることができ、ミソジニーの典型例として解釈することが、できるようになるのである。"
"著者の家父長制秩序理解において重要なのは、その秩序の維持の目的を、男性が女性から何等かの「奉仕」を引き出すことにあるとしていることである。"
"「女性の隷属」の目的は、男性が女性から何らかの「奉仕」を引き出すことにあり、女性を男性から完全に隔離したり虐殺したりすることを、目的としているわけではない。つまり「女性の隷属」とは、特定の男性あるいは男性たちに、「女性から何らかの奉仕を受ける」特権を付与していることとうらはらの関係にあるのだ。"
"家父長制秩序の下では、男性は、「自分は、女性から何等かの『奉仕』を受ける『特権』がある。だから『奉仕』しようとしない女性に対しては、罰を与える正当な権利を持っている」という無意識の規範意識を、もちがちになるのである。この「無意識の特権意識」に基づく、家父長制秩序に従わない女性に対する「処罰」行為こそが、ミソジニーだと、著者は言う。"
"繰り返しになるが、先に挙げた事件がミソジニーの典型例なのは、犯人の男性が、「女性は自分の性的欲望に応える義務があるのに、不当にも誰もその義務に応えようとしなかった。だからそういう女性たちは罰を与えられても当然なのだ」と考えていたと推測されるからである。"
→→自分の言うことを聞かない、思い通りにならない女性に対する懲罰行為。
かず

かず