まさみ

アンナチュラルのまさみのレビュー・感想・評価

アンナチュラル(2018年製作のドラマ)
4.6
た傾向の解剖医ドラマに「きらきらひかる」という往年の名作がある。
アレも死体となった人間を解剖する事で、その人物の半生や生前の秘密が徐徐に解き明かされていく、非常に見ごたえのあるヒューマンドラマだった。
「アンナチュラル」も基本一話完結で、変死体の死因を追求するミステリー。登場人物は全員キャラが立っていて、コミカルな掛け合いが癖になる。
気が強いミコトと「クソが」が口癖のやさぐれ中堂の意地の張り合いは見もの。
アクが強すぎる部下たちに振り回されっぱなしの神倉も、キメる時はバシッとキメてくれる。この手のドラマだと職場に必ず一人は憎まれ役や嫌味なヤツがいるものだが、本作はそれがなくストレスフリー。中堂も嫌な奴ではあるが解剖医としては有能だ。
主人公のミコトは無理心中の生き残りという不幸な生い立ちだが、序盤にさらっと語られるだけで特に突っ込まれない。解剖医を志した動機として述べられるだけで、本筋に関わってくる訳でもない。
死因追求のミステリー要素とハートフルなヒューマンドラマ要素のバランスが良く、死者(=被害者)の側に感情移入しがちな視聴者は涙腺を刺激される。自分は四話の過労死のエピソードに号泣。主題歌の導入が非常に上手く、役者の演技と相俟って心を揺さぶられた。
反対に二話に関しては不満が残る。ゲストキャラの女学生ふたりの背景が掘り下げ不足で、そこまで感情移入に至らなかった。
友情、恋愛、家族愛、隣人愛……各話ごとに扱われる死因とテーマは多様だが、シリアスとコメディの配分が良く後味の悪さを免れている。五話は少し苦い結末だが一応の救いもあるし、基本的には前向きな終わり方だ。
終盤は中堂の恋人が巻き込まれた猟奇殺人の話になるが、前半に登場した敵役の弁護士とタッグを組んで反撃するなど、見返すとわかる伏線の数々が生きてくる構成が上手い。
まさみ

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