セッションで描いた、一線を退いた人間のジャズに対する想いを。
ララランドで描いた、生活のための音楽と芸術のための音楽との違いを。
ファーストマンで描いた、夢追い人の孤独を。
デイミアン・チャゼル監督が過去作品でそれぞれ描いてきた主題を、より深く追求した至高のドラマがここにありました。
8時間強にも渡る重厚で濃厚な、それはまるで長編映画のクオリティそのものです。
ワンダー君は太陽を手掛けた脚本家によって紡がれるストーリー。
一話に対して一人ずつ丁寧に人物描写の焦点を当てていくスタイル。
クセのある人物ばかりで、何も物事がうまくいかないけれども、毎日を必死に生きている人々の「そこにある音楽」が描かれています。
喜びの時も、悲しみの時も、人が生まれてくる時も、死ぬ時も。
つねにそこにある音楽。音楽葬のシーンはただの感動だけではない、胸に来るものがあります。
移民社会フランス。
移民が人口の1割以上を占めているそうです。
貧富の格差も年々広がっており、本作においてはお洒落なパリの街並みというよりは、より現実的で危うさが感じられるストリートの描写となっています。
2015年のパリ同時多発テロの犠牲者への鎮魂と、音楽は決して暴力に屈しない、音楽は生の喜びである、という監督からの強いメッセージも込められていると思います。
1話と2話はチャゼル監督自らが16ミリカメラで撮っているので、スマホで観るよりテレビモニターの方がオススメです。ぜひ映画館のスクリーンで味わいたい。
そんな、まるで映画のような作品でした。
全編に渡る素晴らしいジャズの数々。
タイトル曲でもあるスローテンポで色気抜群の「The Eddy」
ジャズの醍醐味である即興性がふんだんに練りこまれた「Call Me When You Get There」
アップテンポで朝の目覚めのコーヒーとともに口ずさみたくなる「Kiss Me In The Morning」
アマンドラ・ステンバーグが英語とフランス語を交えて優しく歌うデュエット曲「Sooner or Later」
セッションとララランドのサントラを持っている人は、本作のサントラも購入必至です。