ぺむぺる

世にも奇妙な物語'20夏の特別編のぺむぺるのレビュー・感想・評価

2.0
全体的に「らしさ」はあるものの、仕上がりは既視感だらけでキレがない。実にお手軽な「奇妙な話」といった趣で、いかにも中高生向け。大人の“本気“の鑑賞には到底堪えられるものではない。

昔から立ち位置やストーリー自体はそのようなもの(メインターゲットは中高生?)だったし、中には凡作・駄作の類もあり過去作すべてが名作とは言わないが、もっと得体の知れない手触りがあるものが多かった気がする。グロ描写の自粛やコンプライアンスへの配慮など、時代を経て表現の仕方が難しくなったところもあるかと思うが、製作者たちにはなんとか踏ん張ってもらいたい。でないと、テレビはますます侮られてしまうだろう。言うは易しだが、すべてはアイディア次第だ。テレビ屋の矜恃を、次回はぜひ見せてほしい。作り手の“本気”は、あってもなくても、存外若い視聴者たちにも伝わってしまうものだから。

以下、各話の簡単な感想を

▶︎「しみ」
今回の話の中では一番きれいにまとまった作品。やや使い古されたネタではあるものの、だからこその保証された面白さがあり、さらにそれを脚本に落とし込む手際も良い。これ系の話が初めてという人にとってはかなりの良作。伏線の散りばめ方にそつがなく、ミスリードのさせ方もシンプルであるがゆえに強い。そこからの落差と反復が、ラストでしっかりキマっている。

▶︎「3つの願い」
世にもらしい、パラドックスの沼にこちらの常識を沈める系の作品。ネタとしては嫌いではないが、構成の仕方が不満。誘拐事件の裏にある珍奇な真相を暴くのか、一人の男の数奇な運命を描くのか、どちらかに振り切ったほうがよかった。タイトル的には後者を志向してるのだろうから、刑事ドラマ的展開は冗長な気も。滝藤賢一の飄々とした存在感はよかったので、主人公との軽妙なやりとりをもっと見たかった。そこからのあの結末のほうがもっと精神に来ると思う。

▶︎「燃えない親父」
荼毘に付したはずの父親がどうしても燃えない、というしょーもなさの時点でまず笑える。人物の掛け合い自体はまぁまぁだが、役者陣のキャラ立ち具合が良く、ずっと見てられる心地よさがある。葬式という神妙であるはずの場で笑いをとるセンスは買うが、オチのぬるさが好みでなかった。人情話からの…やっぱり人情話はさすがにクドイ。

▶︎「配信者」
「バズる動画を撮りたい」若者に突如降りかかる恐怖を描く。すっきりオチないラストは、普通ならツマラナイと言いたくなるところ、世にもなのでキミガワルイと思ってしまうのが不思議。余韻だけなら番組の枠組みを最大限利用した秀作だが、肝心の中身はイマイチ。ネット動画厨の描き方も、サスペンスの生み出し方も、表面的でかなりのっぺりしたものになっている。そもそも、テレビがネットにハマる人間を描こうとすると、どこか虚勢を張っているような、頭ごなしの非難めいた響きが混じる気がするので、そんなところにもメディアの枠を感じさせない工夫が必要。あるいはそれを逆手にとるようなアイディアが。
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