なっこ

おんなの幸せマニュアル 俗女養成記のなっこのレビュー・感想・評価

3.2
台湾ドラマ2本目
こうすればあなたの幸せが手に入ります、そんなマニュアルがあれば私も見たいし読みたい。でも、自分の幸せが何かもわからないのに他人にそれが書けるわけもないとも分かっている。自分の人生は一日一日ひとつひとつ綴っていくことでしか物語になっていかない、先が分からないもの。それと同じようにどうなっていくかどこへ着地するのか分からないのがこのドラマの面白いところ。四十を前にした女の日常って、ほんとこんなもんだ、共感しかない。この分からなさ、人生の迷いに共感する。簡単じゃないのよ、日々堅実に生きてくって、そんなヒロインのつぶやきが聞こえてきそう。過度に頑張りすぎず我慢もし過ぎず、悲劇のヒロインにも成りきれない、等身大の彼女に心から共感して元気をもらえる。私も日々頑張ろうって素直に思えた。どこに行き着くか分からないから人生なんだよね。

現代を生きるヒロインと、ヒロインの少女時代の日常が交互に描かれていく。面白いのは、途中まで過去の彼らが現代には登場せずに、過去は過去として描写され続けること。いつかどこかで交わるのかなと、彼らはその後どんな風に生きたのかなと楽しみにしながら見ていた。

少女時代のヒロインを見ていると自分の少女時代を思い出す。自分がどんな女性になっていくのか全く想像もせず、毎日をただ生きてた頃を。
一緒に暮らす祖父母と両親。嫁姑の微妙なパワーバランスも描きながら三代に渡る台湾女性の日常が描き分けられているように感じられた。もっと台湾について知っていきたいなと思った。

原作はエッセイとのこと、ちょっと読んでみたい。そして、その後も知りたい。
目の前の現実ばかりを追いかける日々が続いている。でも出来るなら、ある程度のスパンでちゃんと自分の歩みを俯瞰して見ることも必要なのだと思う。ヒロインはきっと断片的にある時点の過去の自分を振り返りながら、それまでとこれからを考えたのだと思う。台湾的なスピードと言うか、このゆっくり進みつつ長いスパンで物事を捉える語りの姿勢には好感を覚える。
幼い方のヒロインは一体幾つだろう。11歳で人格は完成される、誰かにそう刷り込まれたおかげなのか、国民的アニメの主人公のび太が5年生だからか、前期思春期だからなのか、私の小5から小6までの記憶は今でもとても鮮明だ。あの頃の自分の正義を物事の善悪を今の自分はもう持ち合わせていない。10代の後半に夢見たことも20代でやり切りたかったことも果たせたかどうかはっきり分からないままでいた30代の終わりに、もう一度男も女もなく、ただの子供でいられた時期のヒロインが見せてくれる家族の生活は、とてもあたたかくて、ここに答えがあったと、ヒロインと一緒に私も実感した。自分の物語にばかり夢中になっていた。私も家族の物語の中にもう一度自分を見つけよう。結婚や出産といった分かりやすいライフイベントがあれば、そんな風に娘や孫としての自分を振り返ることもできていたのかもしれない。でも何もなくても、過去の自分は居てくれる、これから先どう生きるかを見せてあげられる。私は十分に愛された子どもだった。ヒロインと同じように。愛された子の“その後”を私は生きるのだ、それが私の“幸せマニュアル”だとこの物語が教えてくれた。私が私に聞かせる、物語は続いていく。
なっこ

なっこ