ちぇり

サイコだけど大丈夫のちぇりのネタバレレビュー・内容・結末

サイコだけど大丈夫(2020年製作のドラマ)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

世界観が本当に美しく、多くの教訓があるドラマでした。余韻が残り、見終わってもまた何度でも観たくなります。
サイコパスな童話作家と感情を失った保護士の、共にトラウマを抱える孤独な二人の愛の物語。
「運命」なんてものは、必要な時に都合よく現れてくれる人のことと冷たく言いはしたけれど、結局二人にはお互いが必要だったんですね。
ムニョンは周りにサイコパスと言われ人と関わるのが苦手な気の強い女性として描かれていますが、父親に殺されかけた過去やサイコパスの母を恐れながら育った幼少期の環境が彼女をそうさせたのでしょう。本当の彼女は空き缶なんかじゃなくて、感情豊かな可愛らしい一人の女の子でした。ガンテと出会ってからどんどん感情が豊かになっていき、よく笑い人を気遣えるようになる彼女の姿がとても愛らしかったです。ムニョン役の女優さんの笑顔がとってもとっても可愛かったです。そしてガンテもまたムニョンとの出会いで一人の人間としての感情を取り戻して行きます。それまでは自閉症の兄を支えることに人生を捧げており、自分の人生を諦めて生きていましたが、ムニョンとの出会いやOK精神病院での経験を通じて犠牲ではなく共生として兄と生きていけるようになりました。ムニョンもガンテもサンテも、みんな大人からの十分な愛や保護を受けられなかったから、身体が大人になっても心が幼いままでしたが、他の人との関わり合いの中で人として一回りも二回りも成長できました。
ムニョンは爆弾、ガンテは安全ピン、でも一方でムニョンだけがガンテの心の安全ピンを抜いてあげられる。悪縁でも縁じゃないかというガンテの言葉が刺さります。
個人的には、ムニョンがガンテに愛してると告白したりキスを邪魔されてキバノロに怒るシーンが、最後ガンテの性格が変わったことの伏線に使われていたのが非常に良かったです。ガンテが本当に人が変わったように感情表現が豊かになっていきました。
このドラマの大きなテーマの一つである「童話」。いくつものムニョンの作品が劇中にも登場します。「悪夢を食べて育った少年」「春の日の犬」「手とアンコウ」「ゾンビの子」「本当の顔を探して」どの作品も内容と挿絵が素晴らしく、登場人物たちの境遇に重ねて朗読するシーンでは毎回泣けました。あの本が本当にあるなら、自分の子にも読み聞かせしてあげたいくらい。
最後、みんなで夢のキャンピングカーに乗って旅をするシーンもとてもよかったです。
ちなみに、自制が聞かない時は心で3つ数える、落ち着きたい時はバタフライハグをするというシーンがあり、ドラマの影響で私も日常でするようになりました。
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