なっこ

誰も知らないのなっこのネタバレレビュー・内容・結末

誰も知らない(2020年製作のドラマ)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

ラスト近くに本の扉に書かれる献辞のように捧げられた言葉、

いい番人は不運を追い払う
 ーガブリエル・ムーリエ

そして、作品中で一番印象に残った言葉が、私は周りを不幸にすると嘆くヒロインに「君は不運な人が不幸にならないように支えているんだ」と励ました先輩刑事の言葉だった。

不運な目に遭っても不幸にはならない

これ程難しいことはない。けれど、自分の人生を変えていく力は、きっと自分の中にしかない。どんな人に出会うかによって幸不幸は確かに左右される。でも、だからこそ内面化する他者を慎重に選ぶべきだ。犯人はずっと彼女の正義感に惹かれていたとしか思えない。執拗にウノを追い回すのも彼を自分と重ねているところがあったのだろう。完璧で真っ当な正義感を彼女は体現していた。強く美しいヒロイン像。彼女のようなヒロインをもっと見たい、というのが率直な感想。そして、韓国の復讐ドラマとしては珍しく犯人にも同情的。なぜ彼がそういう風に生きることになったのかを時間をかけて描いている。

傷付きや秘密を抱えて生きなければならない子どもたちはきっとどこの国にもいる。大人が思っているよりも子どもたちの日常はシビアだ。誰も知らない、または、知らないでいた方が良いとさえ思ってよく見ようとしないだけかもしれない。子どもたちは無邪気で幸福な世界で生きていると信じていたいから。

“言えない…でも、助けて”
という、ウノの言葉が一番切なく胸に響いた。

犯人は捕まり、彼女を仕事へと駆り立てていた事件は終わった。
孤独だからこそ君を選んだとまで言われたヒロインはこれからどんな風に生きていくのだろう。
きっと、この事件を解決する中で得た仲間たちとこの先も、誰かの不運を不幸にしないように生きていくのだろう。

私も誰かの良い番人に。

違うかたちではあるけれど、
私もそんな風に生きていきたいと思った。

※以下各話感想
#11-12
韓国ドラマ「train」でも主人公は自分の父親の事件を解決するために警察官を志してた。そう考えると、彼と同じことをヒロインもしている。親友が殺された事件を解決するために警察官になり、その捜査が終われば職を辞すつもりでいる。彼女がヒロインなのだから当たり前のことなのかもしれないけれど、ロマンスもなく物語の中心にずっと居続けられる彼女の主人公に相応しい風格には改めて惚れ惚れする。

あなたの盾になりたいと言われても自分の身は自分で守れますと、はっきり言っちゃうところ好きだな。でも、思い切ってそう言った先生は素敵。

#9-10
ウノの実母とヒロインは対照的。生き方も歩んでいる人生も。それなのにふたりは協力できる。ウノのために。

この実母役の方は韓国ドラマでよく見かける。この人の体現している女らしさはひと昔前のもののように感じる瞬間もあるけど、こんな風にしか生きられない人も確かにいる。そんな彼女を包み込むような愛のある描き方。私も勝手に救われる。信頼できる登場人物が少ない中で彼女をちゃんと信頼できる人として描くセンスは、嫌いじゃない。

梯子のある本棚は憧れる。そして、たった一言で彼からゆっくりと逃げることを決断したウノに拍手。よくやった。

#7-8
怪演とも言える演技で視聴者を惹きつけているホテルオーナー役の彼を誰にするか、が一番難しそう。役のイメージは、香川照之と仲野大賀を足して2で割ったような人。年代もその間ぐらいの良い感じの人って意外といない気がする。良い顔と悪い顔どちらも持っていて、好人物のように見える瞬間もある。魅力的で惹きつけられるけれど、距離を置いて付き合いたいタイプ。

8話目まできたけど、筋を追うので精一杯。物語の時間経過としてはそれほど過ぎてないのかな。刑事と担任教師の距離がまだ縮まならない…見守るこちらの心理的にはもっと近付いて欲しいんだけど。

それにしてもヒロインのお部屋は書棚に囲まれてて、ベランダには植物がいっぱいで、なんて理想的で素敵なお部屋。そして、暗号みたいにして、ウノに本を貸すことで返ってくる彼からのメッセージ。それを読むヒロイン。本好きとしてはこのやりとりはたまらなく好きだな。

#5-6
同時間帯視聴率No. 1を独走したという本作。ついつい日本版リメイクするなら誰をキャスティングするか、なんて視点でも見てしまう。
公式サイトでプロフィールを確認したら刑事のヒロインと協力して謎を追う担任教師役の彼とは、一回りほど年が離れてるのね。役の年齢は正確には分からないけれど、画面上はそれほど歳の差があるようには見えなかった。今のところはヒロインに天海祐希さん、教師役に妻夫木くんとかかな…って物語に集中しなきゃなんだけど…。ウノが抱えていた秘密が分かり始めて、改めて彼がとても真っ直ぐな心を持って生きていたことがわかってきて、一瞬でも何か闇を抱えていたんじゃないかとか疑って悪かったなという気持ちになった。彼が信頼できるキャラクターになりつつある6話の終わり。

#3-4
この美しい男女ふたりがこんなに近くで一緒に居るのに恋愛ドラマじゃないなんて。

過去の事件と目の前で起こっている事件とが交錯していく、その謎を行き掛かり上一緒に調べることになったウノの担任と刑事のヒロイン。遺体を見つけてしまってスッとのけぞるところが普通の人の普通の反応でちょっと安心した。ガツガツ捜査を進めていくところがめっちゃカッコイイけど、それは刑事の範疇を超えてるところもありそう。知人は捜査に加われない、って二度もセリフに出てきたから、それは強調しておきたい事実なんだろうな。優秀だから大目に見てもらえてるのかな。

#1-2
ヒロインの佇まいがかっこよくて継続視聴を決めた。こんなに陰りが似合う女性も珍しい。宝塚の男役ばりにカッコいいけれど警察の制服姿のタイトスカートも似合ってた、脚がとてもキレイ。
親友を喪った過去の事件と年の離れた友達である中学生ウノの抱える問題とが交互に描かれていく感じ。場面を淡々とカメラに収めていく感じであまり内面に入り込まない描き方。説明的ではないこともあってどんなことが進行しているのかちょっとわからない場面もある。でも、感じ方を強制されないのは良いことなのかも。過去の事件の犯人が2話目で判明してホッとしたのに、そんなに簡単にはこの緊張感から解放してはくれないのね、という2話目のラスト。完全に心をつかまれた。
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