トランティニャン

アメリカン・クライム・ストーリー / O・J・シンプソン事件のトランティニャンのレビュー・感想・評価

4.5


O・J・シンプソンーー果たして関心の湧かないセレブの裁判ものなんか観て面白いんだろうかと思ってたんだけど、本作においては全く心配いらない。
なぜなら、O・Jが主役というよりかは、「O・J・シンプソン事件」が主役だからだ。このドラマを観て、すぐカッとなってまくしたてるO・Jに感情移入できる人はそう多くないだろう。
正確にいえば、このドラマはO・Jが殺人者かどうかすら関心が無いようにみえることからして、「O・J・シンプソンの裁判が巻き起こした狂騒」が主役といっていい。なぜ2016年にO・Jなのか、アメリカが分断を加速させている今、このドラマは繰り返しさらされるアメリカの闇を映し出している。

O・Jを断罪せんとするも、自らも離婚裁判に足を引っ張られる女性検事マーシャ、良い奴でマーシャを支えるけど、正直者が仇となる検事クリスがタッグを組む検事側。
一瞬ジョン・トラボルタに見えなかったが、よーく見たらトラボルタな、風見鶏的弁護士シャピロ、狡猾なベテラン弁護士リー、常に胃腸弱そうな、あのキム・カーダシアンの父ロブら「ドリームチーム」と呼ばれた弁護士軍団も曲者ぞろい。
そして、最も濃いのは、敏腕黒人弁護士ジョニー・コクラン。顔面の圧、声の張り、白人化していたO・Jを「プロデュース」する手腕、そしてこの事件を利用して人種問題やロス市警の闇を全米に暴かんとする打算!

弁護士軍団は、O・JのDV問題や証拠に基づいた検察側の主張を老獪なテクニックでかわしながら、陰謀という「物語」や人種問題を持ち出し、証拠の不備を突いて強行突破を図る。その様はヒールにも見えるし、弁護士の鑑にも見え、自分が陪審員だとしたら、どっちも本音と建前が凄すぎて審理無効にしたくなる(笑)。

検察側も弁護側も、「世紀の裁判」とされ、全米で生中継されたことによって名声を得る一方、公私にわたりマスコミに叩かれる。劇場型の裁判は世論を多分に意識したものとなったため、裁判所の外は常に分断が加速し、一触即発の様相を呈す。
文字通り互いに心身を削り合っていく様が後半描かれていくが、なりふり構わない対決に振り回される陪審員や判事の惨状が描かれる8話~9話もとても興味深い。