ロ角

30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしいのロ角のレビュー・感想・評価

4.0
前々から見たいと思っていたので、早く仕事が終わった日に夕方から一気見した。
そもそも自分が同性愛者なので、BL漫画のようなことなど絵空事であることはわかっていたため、そこまで同一視はしないというか、ある種一線を引いて、「これは作品の中の出来事である」という客観的な立場からBLの作品を楽しんでいた。
…のだが、チェリまほはちょっと違った。なんというか、感情の機微の描き方が至極丁寧なのである(三十路を過ぎても童貞を守り抜いた主人公が、突然人に触れただけで相手の感情を読むことができるようになる、という作品なので、そりゃそうなのかもしれないが)。この時黒沢はこう思ったから、こういう行動を取り、あの時の安達の言動が、黒沢にあんな気持ちにさせていた、ときちんと全部描かれる。
原作漫画をドラマ化するにあたって、感情のグラデーションをしっかりすくい上げて描こうという、制作側の意地みたいなものを強く感じた。
だから、無理に恋愛要素を持ち込むわけでもなく、女子からモテモテ、仕事もできるスーパーイケメンがなぜ日陰者に恋をしたか、ということまで丁寧に描いてくれている。こう書くと説明臭い作品な感じがするが、実際はかなりテンポよく進行するし、コメディ要素とシリアス要素のバランス感覚も非常に良く、ほぼノンストップで12話完走することができた。
そしてこの作品のメインキャラクターを演じる2人の演技の上手さがもう…すっごい。本当になんかもう…めちゃくちゃすっごい。町田啓太演じる黒沢の「何でもこなし、一途に安達を愛するスパダリ感」と、「一途すぎるがゆえに、若干粘着質になってしまっている絶妙なキモみ」の塩梅がちょうどいい。ただかっこいいだけではなく、安達が同期の女性と話していたら人並みに嫉妬したり、2人でお出かけしている時に思わず脳内でポエマーになってしまったりと、なんだか親しみやすさがあるため、グッと引き込まれる。また赤楚衛二演じる安達は、目線の揺れ、声の震わせ方で完璧に「冴えないサラリーマン」を演じ切っていて、基本的に安達のモノローグで語られるこの作品の根幹を、きっちり担っている。
ひとたび触れれば聞こえてくる、素直すぎる黒沢のラブコールに翻弄される安達に、こちらまでキャパオーバーになってしまうこと間違いなし。本当に見てよかった。早く映画も見たい。