なっこ

家族の名においてのなっこのレビュー・感想・評価

家族の名において(2020年製作のドラマ)
3.3
それぞれに親の違う血の繋がらない3人の子どもがまるで兄妹のように一緒に育つ

それぞれの親にはそれぞれの事情があって、その複雑な事情を理解しながら自らの境遇を受け入れ、互いを思いやり固い絆を確かめ合って子どもたちは成長していく。

現代中国を舞台にして一般的な家庭の家族の物語をこんなにも温かく素敵に紡がれてしまったら、もう向かうところ敵なしだなぁ、中国ドラマは。

団地の上の階と下の階でふたりの父親がいて、このふたりが好対照なのが面白い。私はもちろん“万年聖女”の李パパが大好き。料理をする姿がこの上なく美しく魅力的。そして血が繋がらないのにこの育ての父親の要素をしっかり受け継いだパティシエの小兄がすごくかっこよくて素敵。彼らが食卓を囲むとき、自然とふたりのパパと3人子どもたちという画になる。パパたちはもちろんパートナーではないが、一見するとそういう風にも見えることが私は素敵だと思ってる。亡くした妻を想って後妻を娶ろうとはしない李パパ。子煩悩でとにかく子どもが第一、しかも他人の子もすごく可愛がってしまう、そんな彼の聖母のような一面が私は本当に好きだ。そういう彼を実は頼りにしつつ、いつも軽口ばかりたたいている凌パパも良いお父さん。いざというときには警官でもある彼が一番頼りになる。そんな子育てに熱心な男性陣をしっかり描いてくれていることはとても良いし、こんなパパが増えていくことを願う。

でも実は、はっきり言って毒親なのではないかと言えるほど、好きに生きてる母親たちの態度や生き方こそ、このドラマの隠れた魅力なのではないかなと思いながら見ていた。

子どもや若者の視点で見るとひどい母親たちばかりが登場する。ヒロインの親友たちの親もなかなかひどい。娘たちに過干渉であったり、自分の道具のように扱ったりする姿には心が痛くなる。でも、兄たちふたりの身勝手な母親ふたりを見ていると、なかなか出来ないことを彼女たちはちゃっかりやっているような気がする。結婚して、夫を持ち、子が生まれたら、いろんなことを諦めてその家の嫁として生きなければならない云々を彼女たちは跳ね除けようとあがき、飛び出し、けして美しくはない生き方だが、自分の生きる道を探そうとする。その気持ちは多分に理解できる。特に、彼女たちがその母親から投げつけられる言葉を聞いていると、それが呪いとなるような言葉として響いていることがよく分かる。

女三界に家なし

未だにこの言葉の通りなのかもしれない。子を捨て夫を替えて生き直す彼女たちを私は責める気にはならない。

子役3人がそのまま大きくなったような、素敵な関係性の子ら3人。母親の不在という共通項が彼らの絆をより深くしたのかもしれない。後半、ヒロインは家を出て親友ふたりと同居し、そこの住まいの向かいへ留学していた兄たちが帰ってくる。

子どもから高校時代、そして社会人、と成長していく彼らを長い目で見守ることが出来る。人生は長いよね。家族のことで振り回されもする。それでも、家族はやはり大事なもの。
親と上手くいかない、親の思う通りに生きられない、結婚はしたけれど夫も子どもも思うようにならない、女たちが精神的にも経済的にも自立して生きていく難しさを、いろんな親子のバリエーションで描いている。
こういう家族が、海の向こうに本当にいるのかもしれない。
私たちと同じようないまを生きているのかもしれない。
そんなことを想像させてくれる良作。
なっこ

なっこ