ジェイコブ

フレイザー家の秘密のジェイコブのネタバレレビュー・内容・結末

フレイザー家の秘密(2020年製作のドラマ)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

NYの上流家庭のフレイザー家は、小児ガン医師として名声を得たジョナサン、臨床心理士のグレイス、エリート校に通うヘンリーの3人家族。グレイスはヘンリーの通うリアドン校の資金調達委員も務めていたが、ある日そこへ不思議な雰囲気を身にまとう美女エレナが加わる。エレナの美貌や風変わりな行動を薄気味悪く思うママ友達に対し、グレイスだけは彼女に寄り添って力になろうとしていた。しかし、資金調達パーティーの夜エレナが撲殺遺体として発見される。同じ日の夜、出張に行っているはずの夫ジョナサンが消息を絶つ。夫の行方を探すグレイスだったが、警察からジョナサンがエレナと不倫関係にあり、事件の夜も一緒にいたと知らされ……。
HBO制作のサスペンスドラマ。ニコール・キッドマンとヒュー・グラントが夫婦役を務めた。
6話という短い話数ながらも、一話一話が緻密に練られた脚本と構成であることによって、下手に長いドラマよりも満足感を得られた。
「人は真実を自分の都合のいいように作り変えてしまう」これはサスペンスだけでなく、現実社会の報道やネット中傷、陰謀論など全てに共通する普遍的なテーマである。本作でも視聴者がジョナサンに対して抱く印象や先入観を逆手に取り、物語が作られている。一話でジョナサンが子煩悩なマイホームパバという印象を与えておき、徐々に嘘で塗り固められた彼の真実の姿が明らかになっていく。その為、一話進む度にジョナサンの印象がまるで変わってくるのは、ドラマのなかでも語られている「確証バイアス」によるものだろう。最終話の後半になるまで、彼は無実では?と思わされてしまうのだから、やはり人は先入観で物事を見てしまうのだろう。
結局真実は単純明解で、ジョナサンを疑った刑事と爺さんは始めから正しかったわけだから、男の本能から来る直感も意外と馬鹿にはできない(女性はほぼ全員騙されていたわけだし)ジョナサンみたいな人間はけっこう身の回りにいるので、人を見る目はちゃんと培おうと思わされる。
本作は予想もつかない展開のドラマや、ミステリー作品をよく見る人ほど騙される。真実は目の前にあり、単純なのについつい実は意外な人が犯人では……?なんて思って、勝手に複雑化してしまい、見終わった後「やられた……」という気持ちにさせられる。