ジェイコブ

共演NGのジェイコブのレビュー・感想・評価

共演NG(2020年製作のドラマ)
4.5
かつてトレンディドラマで一世を風靡した大物俳優・遠山英二は、民放の連続ドラマで男勝りの検事役で人気を博する女優 大園瞳と共演NGの関係だった。過去に恋人関係だった二人は、あるトラブルが原因で破局しており、その因縁から25年に渡って犬猿の仲であった。ある日、二人のもとに視聴率の低迷から、ドラマ枠消滅の危機に立たされているテレビ東洋から、連続ドラマ『殺したいほど愛してる』のW主演の依頼が舞い込んでくる。始めは断ろうとする二人だったが、Netflixで名を上げた市原龍をショーランナーに迎える話題作という事もあり、渋々引き受ける事に。しかしそれは、市原が仕組んだ巧妙なシナリオの始まりであった……。
秋元康原作企画、大根仁脚本監督のテレ東ドラマ。スポンサー含め共演NGな点や、日本のテレビ局の置かれた現状にリンクした部分といい、あらゆる要素で良い意味の悪趣味さが滲み出ている。また、中井貴一の主演映画「記憶にございません」をイジるくだりや、検温を形だけと言い切ってしまっていたりと、大根仁節のきいたブラックジョークが思わず笑えてしまう。秋元康に対して使うのは非常に悔しいけど、面白いと言わざるを得ない作品。
ドラマ中にも触れられているが、テーマは虚実皮膜だろう。至るところで、ドラマの中であるはずが、現実とリンクした部分も多々見られる(小松と出島のモデルは、真田広之と千葉真一じゃないかと勝手に思ってる笑)。若月佑美演じるアイドル出身の女優が、共演者の俳優との不倫でバッシングされる場面では、乃木坂46に在籍していた頃の話を彷彿とさせ、身に入った芝居が見られる。彼女のファンからすれば、本当にやり方が汚いと思うだろう笑。
また、遠山の妻雪菜を演じるのは、山口紗弥加。元アイドルの雪菜を、アイドル女優出身の山口紗弥加が演じており、細かい部分に至るまで設定が作り込まれている。
また、全体的な登場場面は少なかったものの、出て数分で存在感を示す青木崇高や、遠山が所属する、胡散臭い芸能事務所の社長をリリー・フランキーが演じており、脇役の豪華さを含め、今年1の日本ドラマと言えるかもしれない。
今のドラマは、視聴率を取ればいいだけではなく、ネットでバズる事も必須条件である。もしこのドラマがコケれば、唯一のドラマ枠が無くなるという、テレビ局の置かれた厳しい現状も描かれている。
本作の中で登場するショーランナーとは、海外ドラマでは一般的だが、日本で取り入れたのはコード・ブルーくらいで、まだまだ馴染みのない制度。まさに制作・企画の自由度が高いテレ東だからこそ作ることの出来たドラマだろう。

最も印象的なのが、最終話に今まで市原の命令通りに動くしかできなかったヘタレプロデューサーが、酒の力を借りながらも市原に歯向かった際に言った台詞。「ドラマはあんたの頭の中で作ってんじゃない、現場で作ってんだよ!」 ネット配信の時代に押され、苦境に立たされているテレビ局の見せたプライドは、心にくるものがあった。