ノラネコの呑んで観るシネマ

新聞記者のノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

新聞記者(2021年製作のドラマ)
4.0
Netflixドラマ版。
ひどくアンバランスだった映画版より、数段面白い作品なのは間違いない。
変な軍事アレルギーみたいなものを持ってきて、現実に負けていた映画版に対し、こちらのモチーフは森友。
米倉涼子の敏腕記者を軸に、直接的、間接的に事件に関わる人々を描く群像劇だ。
利権を貪る者たちの醜さや、官僚の悲哀などはしっかり描かれていて、キャラクターの対抗で展開するドラマは観応えがあり飽きさせない。
しかしよく出来てるとは思うが、政治ドラマとしては正直物足りない。
物語が森友(ドラマでは栄新)問題の発覚から始まり、描かれる”悪”は官僚の隠蔽工作。
が、巨悪の根源たる“権力”の姿が全く見えない。
ユースケ・サンタマリアが、山口敬之や竹中平蔵はじめ、官邸の利権に群がったお友だちを統合した様なキャラクターで、一応ボスキャラのポジションだが、そもそもの問題は彼らを呼びこんだ官邸そのものだったはず。
だがこの作品では、総理は画面にすら出てこない。
フィクションだと言いつつも、中心に置かれた森友事件の事実関係はほぼそのままなのに、本当の権力に近くなればなる程、キャラクターも出来事も作り物感が増してゆくのは、ぶっちゃけ腰が引けているとしか思えない。
あくまでもフィクションだと言うなら、官邸を中心とした利権の構造、権力のダイナミックな流れを作り込んで見せて欲しかった。
それこそ“取材力”が問われるだろうけど。
逆に森友をこう言う風に使うなら、やはり当事者にコンセンサス取ってないのはマズいだろう。
シーズン2があるなら、権力者がいかにして利権の虜になってしまうのか、この国におけるその辺りのメカニズムを是非描いて欲しい。
これだけ面白く作れるのだから、日本版「バイス」くらいの突っ込み具合を期待したい。
別に笑いに持ってかなくてもいいけどさ。