Moiai

俺の家の話のMoiaiのレビュー・感想・評価

俺の家の話(2021年製作のドラマ)
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これまでも空気読めない感(明らか)や自我のなさ(女性陣からも指摘されている)に寿一の妖精性を感じていたけれど、最終回でその妖精性が爆発してついに観山寿一という人間を見失う結果に…………と呆然としていたらタイトルが「俺の家の話」で、「俺の話」ではないのですべてはクドカンの掌の上、、
大学のとき、「放蕩息子の帰還」というテーマの仏文の授業があって、でも内容を全く覚えていないので結局放蕩息子が帰るとなにがどうなるんでしたっけ?!と教授に連絡したい、迷惑だからしないけど、それくらい観山寿一を知りたいんだよわたしは(追記: サルトルのジュネ論か何かの抜粋だったような気がする、、聖書の放蕩息子の話がベースだったような気がする、、)

愛おしさと煩わしさが渾然一体となる家族への複雑なデカ感情はきっと多くの人が身に覚えがあって、わたしも寿一といっしょに胸が痛くなったりうれしくなったり悲しくなったり泣いたり悔しくなったりした。じゅじゅからの「褒めちゃうと終わっちゃうから」の吐露には、わかってるんだよ、それは!こっちだってわかってるんだよ!!でもさ!!と涙が止まりませんでしたが、こう思うと最後まで徹底的にじゅじゅに優しい物語だったような気もするけど、子どもに先立たれるというのは親にとって何よりもつらいことだと言うしね…… そしてわたしたちはじゅじゅ的、つまり老いた家父長の過去の所業を赦さなくてもいいんだよ、とちゃんと言ってくれたのは大きかった。赦さないことと大事に思うことは両立できるのよな。
家制度はほんとにどうしようもないので各々が今新しい家族のかたちを模索していて、だけど新しいかたちを見つけるには、古い家のかたちを見つめ直す必要があるのかもしれない。わたしたちが必要としていたのは、「俺の話」より「家の話」だったんだな、と改めて思いました。さくらさんとユカさんが「同じ家の人間」として仲良くしているのもいいと思った。さくらさんに「私は2GBでいい!」と明言させたのも、そのときはもやもやしたんですが、結末まで見たらまあなんか納得、、

それにしてもタイムリーなことに、こないだお誘いいただいて20年ぶりくらいに歌舞伎座に行ったら偶然玉三郎さんの「隅田川」だったんだ。かなりミニマルでグルーミーでダウナーで、子どもも姿を現さず、ひたすら斑女の前の悲嘆、という感じだったけど、能バージョンの隅田川も改めて観てみたいと思いました。あと長瀬智也バージョンも見せて!!
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