mimitakoyaki

クイーンズ・ギャンビットのmimitakoyakiのレビュー・感想・評価

クイーンズ・ギャンビット(2020年製作のドラマ)
4.3
このところは韓国ドラマ一辺倒だったので、アメリカのドラマを見たのは久しぶり。
24とかプリズンブレイクとかブレイキングバッド、ファーゴにハマった時期もありましたが、このドラマもぐいぐい引き込まれてとても面白かったです。

60年代のアメリカ。
子どもの頃に、無理心中で母親を亡くし、自分だけ生き残ったため孤児院で育ち、そこの用務員のおじさんから地下室でこっそりチェスを教わったベス。
数学者だった母親譲りの頭脳でチェスの才能を発揮し、白人男性ばかりのチェスの世界にたった1人で少女が飛び込み、勝ち上がっていくという話です。

チェスのことなど全く知らなくて、どの駒が何とかルールとかわからないですが、チェスの世界を垣間見る面白さはすごくあって、過去のマスターの打ち方、作戦を徹底的に学んだりして、奥深い知的なゲームだというのは伝わってきました。

家族もお金も何も持ってない少女が、チェスの腕ひとつでお金や名声を得るほどになり、いつも同じ地味な服しか着れなかったのが、どんどん洗練された装いに変わって美しい女性へと変身していく様が鮮やかでスリリングでもあります。

順風満帆に見えても、子どもの頃からの深く大きな心の傷、孤独というあまりに大きな穴を埋めることができず、また天才ゆえの苦悩やプレッシャーも大きく、酒や薬に依存して自分を擦り減らし見失ってしまいながらも、自分の事を心配して助けてくれる人、心の奥底にある孤独を理解し寄り添ってくれる人、チェスを高め合える仲間などの存在に支えられて、心の傷を乗り越えて新たな自分を見いだしていくのがとても良かったです。

それから、当時のアメリカにとってソ連は敵国なわけで、厳しく危険な国というイメージが植え付けられていたわけですが、どんなに国同士が敵対して険悪な関係であっても、文化やスポーツや芸術、音楽などはそんなのおかまいなしに、どんな国の人とでも繋がれるし一緒に楽しめたり感動できるんですよね。
そういうこともちゃんと描かれていたのも良かったです。

テンポが良いしストーリー自体が面白いのですが、映像が素晴らしく洗練されていて、まるで映画を見ているかのようです。
60年代という時代を映し出すクラシカルなファッション、ヘアメイク、美しく統一感のある壁紙や家具、調度品などのインテリアが上品でとにかくお洒落です。
全体的な映像の色合いも落ち着いたトーンで、カメラアングルなんかもとても良いんですよね。

計算高く作り込んだ美しく上質な映像だけでなく、ベスを演じたアニャ・テイラー=ジョイの魅力がまたすごい!
ちょっとエマストーンにも似た感じはありますが、透き通るような白い肌に赤い髪、ものすごく大きくて離れた目が個性的で、しかも14歳くらいから大人までを演じてますが、ちゃんとちょっと大人びた少女に見えるし、心を許せる人や甘えられる人もいない寄るべなさが、喜怒哀楽の乏しい表情から伝わってきて、それだけに最後にようやく見せた笑顔に見てる方も心が解きほぐされる力と可愛らしさがあり、素晴らしかったです。

自分の知らなかった世界を見せてくれ、見どころたくさんの良い作品でした!

25
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