うさこ

クイーンズ・ギャンビットのうさこのレビュー・感想・評価

クイーンズ・ギャンビット(2020年製作のドラマ)
4.1
天才女性チェス棋士が世界でどんどん上り詰めていく物語。

主人公ベスは実母が自死、児童養護施設で育つ。運良く養子にもらわれたけれど、養父に捨てられ、養母はアルコール依存ぽい微妙な人。その生い立ちのせいで自身も安定剤とアルコールの依存体質である。とことん暗い設定でありながら、ドラマはどこか明るく終始楽天的な雰囲気である。それはベスを含めチェスの勝負師たちが、純粋に勝ちたい気持ちをあらわにしていて、強い者をリスペクトし、さわやかであることが影響しているのだろうと思う。ベスのファッションもとても魅力的。チェスの対局もさまざまな手法でスリリングに見せてくれて飽きさせない。(チェスはわからないけど随分細かい監修が入っていることは想像できる。)

ベスの周りの人々の優しさもしみる。チェスを教えてくれた用務員のおじさん、浮き沈みが激しかったけれど愛情は確かにあった養母、それからほどほどにイケメンのライバルたち。ベスは不遇に育ち、チェスに没頭してしまうためにうまく人間関係を築けないのだけれど、それだけに彼らの少しの優しさが見る者にも伝わってきて切なくなる。

ただ、一つだけ気になったのはベスのアルコール依存、安定剤依存の描き方がとても軽いのではないかということ。ひどい依存症に陥っているように見えるのだが、結局自分の意思のみで軽く乗り越えてしまう。依存症は意志の力では克服するのが難しいものであるので、その点誤解を与えてしまうのではないかという危惧を感じるし、ベスが依存を克服するところをもう少し詳しく描いていればストーリーに深みが加わったのではないかとも思った。

 余談であるが、見ていて思わず思い出したのが「聖の青春」。チェスは将棋ととても似ているゲームなのだけれど、チェスにまつわる文化も将棋そっくりで、天才ならではの苦しみや喜びも共通するものがあるのかもしれない。

敗者が投了して対局が終わること、中断する時の封じ手、終わった後の感想戦、大きな対局になると大盤パネルにみんなが注目してあれこれいってる様子など、よく見るニュースとデジャブ感満載。厳しい勝負師の世界はどこも同じなのだった。
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