あすか

クイーンズ・ギャンビットのあすかのレビュー・感想・評価

クイーンズ・ギャンビット(2020年製作のドラマ)
4.3
とてもとても面白かった…
みんな魅力的に思うであろう映像美も相まって…夢にみるほどだった…めっちゃネタバレかましながら話すよ…!

まずわたしはこの時代の洋服がだいすき。フレアスカート、フラットシューズ、バイカラーのワンピース、大きなくるみボタン、台形スカート、真っ赤なコート、スカーフ、、、
ベスの衣装を見ているだけでも楽しい。その上建物もインテリアも可愛い。光の射しこみ方まで綺麗で、じっと眺めていられる映像がずっと続く。色や柄が豊富で見ていて楽しい。ベスの引き取られた先の実家の可愛さったらすごい。
そしてベスの視線や動きの色っぽさよ、上品さよ、すっかり虜です。

そしてきちんと話も面白い。
暗い過去や葛藤や依存なんかもあるけれど結構あっさり描かれているのが良い。こういう勝負ものって緊張してしまってあまり好まないんだけど、サクサクと勝敗さえ分かる。変に引っ張ってどきどきさせてこない、それなのに面白い。
ベスの成長や周りのキャラクター性だけで充分なのがすごい。

心を病んだ母親に育てられ、心中を図られ、生き残り、孤児院で育ち、引き取られた先でも義母は病み、夫婦仲は悪く、義母との共依存、薬とタバコと酒への執着、義母は肝炎で亡くなり、自身も破滅に向かう、こう書くととんでもなく暗いはずなのに全くそう感じさせない。その強さがベスにはあるし、ベスは1人じゃないから。
男だらけのチェスの世界で恋をしたり関係を持ったり、周りから期待を含んだ目で見られ続ける中関係性を広げていく。みんなベスのことがすき。なぜなら希望だから。夢だから。かっこいいから。そうベスはとってもかっこいい。その弱さや不安定ささえ天才さながらでなんだかかっこいい。あと弱さは共感を生むから。みんなベスの弱さにうんうんって頷いたんじゃないかと思う。何もかもが嫌で腹が立って自傷に近い行為に励みたくなることあるもんね。
そして周りの気持ちをありがたく頂戴しながら、ベスはどんどん更に強くなっていく。人に助けられて昇りつめていく。その感覚が誰もがすきなヒーロー漫画のようで爽快。

周りが本当にみんな良い人で、そこの心情の動きがもっと細かくみれたらより深みにハマっていけそう。でもきっと精神がもたないからこれくらいあっさりしてるのが良いのかも。

ラスト1、2話がとっても最高だった!
孤児院は苦しい場所だったけど、そこで出会ったかけがえのない人たちを思い出してからのベスは本当に強くて。
タウンズとの再会からの一連の流れ嫌いな人おる?おらん!って感じの胸熱展開。
最後だいすきだったシャイベルさんの話、若い頃は記者に書いてもらえなかったけれど強くなって記者に絶対にこれは書いてと言い放つシーンがああ、強くなった、力を持ったんだと思えてじんとくる。シャイベルさんの切り抜きのシーンは言わずもがな号泣した。10ベル返していてほしかったけど、シャイベルさんはきっと気にしてないよねと思って、いい人だったんだろうなあ。

チェスが分からなくてもなぜかこんなにも楽しい。むしろチェスがやりたくなる。でもきっと日本でいう将棋のような立ち位置だろうからとんでもなく難しいんだろうな。

美しくて強くて賢いベス、きっと最後は母親の言葉を全て振り切れたんだろうと思う。男のことを憐んでいた母親とは違うところにベスは立っていた。男社会のチェス界でベスは迫害されたりもせず1人なんかじゃない。男の話を受け流したりせずきちんと強い女になった。目を閉じなかった。母親のようにだめになってしまわなかった。また義母のように男に見離されて酒に飲まれることもなかった。ベスはいつだって自分が可愛いから、執着しているから、周りの男たちは振り回される。それにいつも心に初恋の男がいるからそんなの敵わないもんね。でも男の人ってそういう自立した女の人がすきなんでしょ?ほっとけないよね?ベスももちろんほっとかれない。その安心感たらすごいよ。
孤児院にいたときのベスの雰囲気は本当に親に問題があった子供のそれそのもので正直ゾッとしたけれど、チェスに出会えたこと間違ってなかったんだなと思える終わり方がとても良いです。

天才には天才の苦悩がある。のしかかるものがある。それをベスは跳ね除けることができるのか、天才でいられるのか、はたまた変人で終わるのかが主軸。
酒もタバコもほどほどに、ベスにはもっと強くなってほしいなんて勝手に願う。
あすか

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