tetsu

猫のtetsuのレビュー・感想・評価

(2020年製作のドラマ)
3.5
傑作短編『転校生』の金井純一さんが監督・脚本、20代の若手女性監督・松本花奈さんも監督をしているということで、気になって、鑑賞。


[あらすじ]

とある島へやって来たフリーターの天音光司と、そこで生活をする余命わずかの女性・金子みねこ。
偶然の出会いから恋に落ち、同居生活を送ることになった彼らのラブストーリー。(約24分×全6話)


[解説]

人気バンド・DISH//の名曲『猫』を題材にした連続ドラマ。
主演は、『荒ぶる季節の乙女どもよ。』でも存在感を発揮した芸人・まえだまえだの弟・前田旺志郎さんと、『映像研には手を出すな!』の大生徒会 会長役も印象的だった小西桜子さん。主題歌は原案曲のネット配信バージョン『猫 ~THE FIRST TAKE ver.~』。


[感想]

序盤の突っ込みポイント*から「1クールはさすがにキツいのでは……?」と危惧していたものの、3話ラストの衝撃から一気に惹き込まれた感がすごい。

*シンプルにも程があるタイトルのフォント、「優しい主人公&彼を振り回す余命わずかなヒロイン」という『君の膵臓をたべたい』(DISH//のボーカル・北村拓海さんの代表作でもある。)と同じプロットなどなど。

主要人物3人という限られた設定ながらも、彼らの相性の良さが滲み出ており、心地のよい空気感を引き出しているのは、見事としか言いようがない作品だと思う。


[各話感想]

**************************************

第1話

[初登場 or ゲスト]
前田旺志郎、小西桜子、渋川清彦

[監督]
金井純一

[感想]
尺の都合なのか、二人の出会いから唐突に描かれるオープニングには焦った。
(本気で初回を飛ばしたのかと思った。笑)
ただ、海に囲まれた島のロケーションが素晴らしく、映像が美しいのは良かった。
物語そのものは、前述した通り、『きみすい』のまんまwではあるが、そこに説得力を加えたラストの会話シーンは高く評価したい。
尺の都合もあるとは思うが、両方から鼻水を流した小西桜子さんの熱演に余韻がなかったり、唐突にDISH//のご本人登場パートが始まるエンディングには、若干、困惑も……。今後に期待!

**************************************

第2話

[初登場 or ゲスト]
特になし

[監督]
金井純一

[感想]
不安視していた余命宣告ものとしての展開は鳴りを潜め、主人公たちの「ありふれた日常」を描くことで、より、その大切さを感じさせる内容が良かった。
主人公カップルのささやかで幸福な日常描写に、てっきり松本花奈監督回かと思いきや、普通に金井さんの回だった。笑
予想以上に急展開を迎える結末には、純粋に次回が気になる。

**************************************

第3話

[初登場 or ゲスト]
特になし

[監督]
金井純一

[感想]
冒頭から主人公カップルが相変わらずのイチャラブ展開を繰り返しているので、「まだやるんかいっ!」と心の中でつっこんでいると、数秒後には反省することに……。笑
渋川清彦さんが、相変わらず、かっこいいなぁ~と思いつつ、このドラマにおける前田旺志郎さんはイケメンすぎるし、小西桜子さんは可愛すぎるしで、多幸感が大渋滞。
しかし、油断していると、結末で超ド級のぶっ飛び展開が起きて、一瞬、耳を疑った。

**************************************

第4話

[初登場 or ゲスト]
特になし

[監督]
松本花奈

[感想]
ヒロイン視点になった物語に合わせ、監督が松本花奈さんへとバトンタッチしたシリーズ後半戦初回。
相変わらず、前回を見ていたのか不安にさせられる導入の演出には困惑するものの、安易な形で「死」を描こうとしない物語には好感を持った。
ヒロインが「死」に向き合う中で、過去のセリフが思わぬ形でブーメランとして返ってくる展開がすさまじく、胸が締め付けられた。


**************************************

第5話

[初登場 or ゲスト]
石田ひかり、酒井若菜

[監督]
金井純一

[感想]
カメラの揺れや構図、新キャラの唐突な登場など、ツッコみどころが多いエピソードではあるものの、終盤のセリフと思わぬ着地が秀逸すぎて、胸に刺さりすぎた回。
今の自分自身の心境とヒロインの感情に、どこか重なる部分もあり、つい感情移入しすぎた面もあるが、なぜか涙が止まらなくなってしまった。
視聴後、YouTubeで、いつの間にか、「猫 / THE FIRST TAKE」の動画を見てしまいましたね……。完全なる沼落ち。

**************************************

第6話

[初登場 or ゲスト]
吉沢悠

[監督]
金井純一

[感想]
THE エピローグみたいなボーナスエピソードで、正直、肩透かし感が否めなかった。笑
何の説明もなく、唐突に突入するファンタジー展開には困惑するし、名曲「猫」を原案にしている割には、内容をざっくり回収した結末にも、若干、不満が残った。
確かに、尺の都合上、難しかったことも何となく予想はつくが、今回の内容を前半で描写し、数年後のヒロインの姿などを描いていれば、なお、良かったかなぁと。
とはいえ、主演二人が愛を語るクライマックスの名演には、評価出来る部分もあり、彼らの今後の活躍を追いたくなる作品ではあった。
tetsu

tetsu