あーさん

こもりびとのあーさんのネタバレレビュー・内容・結末

こもりびと(2020年製作のドラマ)
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このレビューはネタバレを含みます

去年やっていたドラマを録画したまま、寝かせていた。
観るタイミングを選ぶなぁ…と。

武田鉄矢が父親役。
過去に教師をやっていて、ガンバリズムの人。
次男雅夫役が松山ケンイチ。
約10年前に鬱になって仕事を辞めてから、働かずずっと家に引きこもっている。母はその頃に病気で亡くなっていて、父子の二人暮らし。
所謂出来のいい長男に対してコンプレックスがあり(いつも父親から比べられていたと思っている)、自分は何をやってもダメな価値のない人間だと'カチナシオ'のハンドルネームを使ってTwitterで呟いている。

髭を生やして髪を伸びっぱなしにしても、松ケンだから画になる。
少ないセリフの中で、言葉によらない演技が求められる役だったが、その辺りはすごいな、と改めて。
武田鉄矢は、元教師という役というのもありいつもの金八先生節だったけれど、戸惑ったり怒ったりする等身大の父親らしく感じた。
余命幾許もない、というタイムリミットがある中での不器用な親子のやりとり。
SNSを使って息子に歩み寄ろうとする所が、現代を象徴していた。
長男の娘役の美咲(北香那)が、自身も就活で社会に出る厳しさを味わいながら、祖父や叔父に一生懸命寄り添い、アシストをしてくれていたと思う。
そこがとても良かった!
演技も自然で◎。

問題解決までを描くには時間も短く、そんな簡単にはいかないだろう、、とも思ったが、ひきこもり当事者と家族間の溝やひきこもりを乗り越えた人の話を聞く会の様子(おそらく俳優ではなく当事者の人達による)などは、実際に動いてみることの大切さに気づくきっかけになると思った(こういうのはNHKのお得意分野!)。
口を開けば小言、、では子どもは心を開かない。挨拶、何気ない会話は、日頃から家族間でも大事!

現在日本では約100万人のひきこもりの人がいて、その6割ほどが中高年だという。
何故、ここまでになってしまうのか?
このドラマのように、就職氷河期に非正規でしか採用されなかった→一度辞めてしまうとなかなか再就職できなくて自己肯定感を無くし、家族も世間体を気にして相談窓口にも行けない→40代になると受け皿がない、など長期化してしまう理由などもよく分かった。

親に反発しながらも、親の期待に応えられない自分が情けなくて動けなくなる、、本当に辛くて苦しい時間だと思う。
家族にとっても、どうすれば動けるようになってくれるのか。。
同じくらい苦しい時間である。
私も極々短い期間ではあったけれど、同じような立場になったことがある。
その時の経験から言うと、家族は犯人探しはやめてありのままを受け止め、今ここにいるその子の姿を丸ごと愛せた時、生きていてくれているだけでいいと心から思えた時、道は開けていく気がする。
本来そうあるべきなのに、いつの間にか条件付きの愛情になっていないか?親として振り返る勇気が大事だと思う。
自分らしさを見失って無理していた時間と同じだけ、前向きになるまでには時間がかかると思っている。
子どもは優しいから。。



大丈夫、ここから踏ん張れる。
道は簡単ではないとは思うけれど、きっとやれる。
忘れないで、君には味方がいるから!

雅夫にそう声をかけたくなった。
あーさん

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