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TOKYO VICEのFrengersのネタバレレビュー・内容・結末

TOKYO VICE(2022年製作のドラマ)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

家族を光、ヤクザを闇とした群像劇に痺れる。主人公ジェイクは記者として客観性を担保しながら、家族、仕事、闇社会の属性を帯び、彼を取り巻くキャラクターと部分的に照応しあう。佐藤とサマンサとは家族との疎遠と実直な人間関係へのあこがれを、片桐とは闇に足を踏み込みながらも家族を第一にする人間性を、丸山とは複雑な家族関係と仕事への傾倒と重なり合いながら、どこにも行きつかないし追求していたヤクザ社会は無傷なまま体制を保っている。守るべきものが無くなった人間が無残に退場するという話の軸も非常に面白い。

そして目を見張るのは美術、照明、衣装の凄さ。徹底的に90sをリサーチしたであろう細やかな衣装と美術。第七話におけるクラブシーンの舞台照明と愛人に当たる光、二人を回りながら盛り上げていくカメラワークにはビビらざる負えない。ポストプロダクションを施した深い陰影、クラブやデスクの行き届いた空間設計は2010年代の映画/ドラマを通過した実に見事なもの。宇多田ヒカルをはじめとするポップミュージックの配置、カヒミカリィとBSB「i want it that way」の交錯も忘れられない。

4人の監督はそれぞれ社会派映画の系譜をなぞりながら、多角的なショット、長回し、ピン送りと的確につなげていく。しかし、圧倒的なのは第1話のみ監督したマイケル・マンと言わざる負えない。背後にピタリとくっつくカメラ、主人公の部屋のあり得ないほどのローアングル、ピン送りの行ったり来たりにより、記者の異物感や監視社会、違和感をあぶり出す映像のつなぎ方は類を見ないもので非常に興奮した。ドラマにおいてこんな映像を見たのは初めてだった。
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