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書けないッ!?〜脚本家 吉丸圭佑の筋書きのない生活〜のsanshokuのレビュー・感想・評価

4.0
最近の私は、投資と言えば思い出にしかならない様な時間を、膨大にゲームへと費やしていた。そんなゲームをやめると決めた理由は色々とある。色々とは言うが、ゲームのシーズンが切り替わったとか、誕生日を迎えてしまったとか、そんな感じで特に深い意味はない。濁さずに言えば、これだけ時間をかけたんだからとムキになって続けても思い通りにならず、引くに引けなくなっていたところをアレコレと無理矢理に理由を掻き集めてなんとかやめるに至った、そんなところだ。
ゲームをやめたら時間ができる。ごく当たり前な事だがなんだか嬉しくなってきた。他にやりたかったことができるぞーって。やりたいことはたくさんある。山の様に積んである本とか、録画データに圧迫されている外付けHDDとか、無分別に撮り貯められた写真フォルダーとか、部屋の片付けとか、「後でまとめてやる」を免罪符に積もり積もっている。人間性が自室の隅々に散りばめられている。悪い意味で。幸いそういったものが溜まっていてもあまりストレスを感じない性格なのが唯一の救いだ。両親よ、こんな性格に産んでくれてありがとう。あえて言っておくと両親は何も悪くない。悪いのはこの私だ。

前置きがとても長くなった。

手始めに録画していたものを消化しようと思った。ちなみに私は「消化」の次は「吸収」があるため、コンテンツに「消化」という表現を使うのには納得している派の人間である。そう言い聞かせている。
それはそれとして、ここからが本作のレビューだ。

このドラマは例えるなら私にとって職場体験の様なドラマだった。全部が全部そうではないとは分かっているものの、ドラマってこういうふうに出来ているのかと、知らない業界を垣間見れた気分になれた。
ただ、最初の1時間半くらいまでは、ストーリーの行き先が読めず不安定に感じられてしまい、このまま観続けて良いものかと悩んだ。いわゆる「面白いから2、3話我慢して」ってやつである。そこからはもう止まることなく最後まで観れた。「続きが気になる!」とはちょっと違うが、もっと観ていたいと思えてしまった。

なんといっても登場人物達の表情や仕草が良い。率直に言えば山田杏奈に惚れてしまった。ドラマ「10の秘密」で初めて山田杏奈を認識した時にはなかった魅力がそこにはあった。えっ、こんなに可愛かったっけ?こんなに綺麗だったっけ?こんなに素敵だったっけ?と混乱の嵐である。「会いたい」のセリフでは画面の前で仙川と共に悶絶した。魅せ方が上手すぎる永久保存したい。こんな子が隣に居てくれたら絶対幸せなんだろうなと思う。羨ましい。仙川と絵里花の距離が近くなっていくに連れてキツくなっていく態度も最高だ。全然許せてしまう。というより私にもして欲しいその態度。そして仙川も良いやつなのだ。最初はちゃらんぽらんかと思っていたらそうではない。もはや後半は主軸のストーリーよりこの二人を観るために観ていたと言っても過言ではない。

そうは言ってもこのドラマは脚本家のドラマだ。脚本家が脚本家のドラマを書くということは、ということにどうしても思いを馳せてしまう。この作品を作る時もこんなだったのだろうかとか、ドラマを観ながらドラマ外のことを考えさせられ、上手いなあと関心してしまう。また、ドラマ内でドラマを作っていたり、本作はとても手が込んでいる気がする。そう考えると、もしかすると本作の脚本家福田靖はバリバリに書ける人で主人公吉丸圭佑みたいにはならなかったのではないか、と裏の裏辺りまで思考が巡る。たとえそうでなかったとしても、脚本家だからこそ書けるセリフだったりと、脚本家が脚本家を書く強みが存分に発揮された作品だったことは間違いないのではないだろうか。

そんなこんなを考えながら、最終的にはモヤモヤを残すことなくスッキリと終わってしまい、「良いドラマだったな」と独り言が漏れてしまった。
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