流之助

返校の流之助のネタバレレビュー・内容・結末

返校(2020年製作のドラマ)
3.1

このレビューはネタバレを含みます

原作ゲームの要素をしっかり取り込んでオリジナル要素で物語と登場人物を掘り下げた良作。真綿で締め付けられるような重苦しい精神的にキツイシーンが多く、お化けなど視覚的な怖さよりも辛かった。そんなシーンを丁寧に描いてからのラストの「自由の雨」。ふたつの植物は寄り添ってぶつかりあい許し合って次の道へと踏み出していった。ルイシンを見送ったユイシアン。迎えに来てくれたのは先生だったらいいな。先生側の部分について原作ゲームではフワッとぼかすように描き、プレイヤーの想像に委ねる演出を用いた。ドラマ版でそこが掘り下げていて涙腺が刺激された。時には厳しい現実の世界を乗り越えるために虚構の世界が必要になる。しかしそのまま現実を歪めて虚構の世界に浸ってしまってはいけない。新たな一歩は踏み出せた。しかしまたしても嫌なことや辛いことはたくさんある。主人公や家族の問題など解決しないままの事柄を抱えつつ、それでもきっと厳しい季節に咲いた花のことを想い闘っていって欲しいと思った。
余談だが、校長とバイ教官をしっかりやっつけたのは個人的に最高!日本だと変に復讐を思い留まらせて最後の犠牲者を出さない展開にしがちだが、しっかりトドメを刺しているのは痛快だった。生きていれば自分だって清いままではいられず、何度も取り返しのつかない間違いを犯してしまうのが人間であり、それを許せるかどうか、許せない気持ちをどこへ持っていくか、それすらも自由なのである。最後がややご都合主義に思えるような大団円になっていたが、この尺でこの物語をしっかりと描いていたからこそのカタルシスがあって良かったと思う。現実はそこまで優しくないのだろうけれど、ドラマの中だけでも。
流之助

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