ねまる

イチケイのカラスのねまるのレビュー・感想・評価

イチケイのカラス(2021年製作のドラマ)
3.5
今期は良作を超えた秀作が多くて、ちょっと霞んだけど、このドラマも非常に丁寧に作られた良作でした。

良い意味でも、悪い意味でも丁寧。
良い丁寧さというのは、刑事裁判という犯罪や事件を扱うテーマでありながら、登場人物のキャラクターや、全体のテイストを和やかに描いたところ。
被告人が間違えた人間や、悪い行いはあっても、悪い人間はいない性善説に立ったようなところもあって、身構えず気楽に見られたということもある。

職権を発動します、の号令と共に、刑事などがやる様な捜査に主人公たちが乗り出すことで、新しい裁判モノを生み出しているし、
被告人が語ろうとしない真実を紐解いていくのは裁判ものの面白さもあって、美味しいとこ取り。

竹野内豊のキャラクターも、変わり者だけど、彼の意思を貫いていて、応援するというより事務官と一緒にみんなで温かく見守るようなキャラクターになっていたのが良い。
人気者というよりも、黒木華という演技派を脇に置いて、ベテラン俳優陣を中心にした布陣だからこそ出るふんわりした空気が愛おしい。この空気こそが、このドラマだと思ったり。可愛い真剣佑も良かったです。
ゲストは、バカリズムとか、板尾創路とか、癖のある人達を連れてくるのもなるほどね。
語れば語るほど、隅から隅まで丁寧な仕事。

悪い意味で丁寧というのは、
過剰な説明が多いところ。たしかに裁判モノというのは法令やルールなど分かりにくいところも多い。
意図的にやってるんだろうけど、
言いたい主張の部分を図解したり、
何度も口で言わせたり、
今○○って考えたでしょ、って台詞を言わせることで、言葉には出してない気持ちを説明させたり、ちょっと丁寧過ぎる。
ガイドラインを引き過ぎな感じ。
でも今、スマホいじりながら観たり、1時間ドラマに集中できなかったり、ちゃんと見れないあげく、分からなかったと否定したり、観るのをやめたりする人が多いんだって。
それぞれ事情がありながら観ているから、丁寧に説明されたものを倍速とかで観るのかもしれないけど、ドラマも文化で芸術という側面もあるので、そういう人たちに合わせて、レベルを下げられてしまうのは悲しい。
とわ子が最初から日本での視聴率よりも、世界配信を念頭に置くことで、クオリティを重視した理由はそこなんだろうなぁ。

悪いわけじゃないんだけど、
私の中では秀作になれなかった理由はここかなと思う。
挿入される昔話とかは好きでした。
言いたいことを簡潔に短い物語で代弁するのは面白く、分かりやすくて、なるほどでした。
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