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ボーイズ・ドント・クライのRのレビュー・感想・評価

ボーイズ・ドント・クライ(1999年製作の映画)
3.8
何たるヒドイ話だ。ものすごヘビー…けど、ちゃんと娯楽してるので、見終わったあとそんなに重い気持ちを引きずらないまま、テーマが自然な形で心に残る。巧みなストーリーテリング。けどもっとズシーンと来てほしい人には物足りないかも。主人公のブランドンはFtMのトランスジェンダー。サラシを巻いて胸をつぶし、パンツに詰め物して、完璧な野郎の身のこなし。中身は100パー男。女の子をナンパしてデートした後、女だとバレてしまって、激怒した女の子の兄が襲撃! とりあえず逃げて飛び込んだバーで出会ったナイスな奴らに連れられて、彼らの町のバーに行ったとき、その後の人生を大きく左右する運命の出会いが…カラオケをクールに歌うラナから目が離せないブランドン。最初はまったく興味なさそうなラナも、だんだん純粋で真っ直ぐなブランドンに心惹かれていき、ついに2人は結ばれる。しかし、ラナに惚れてる荒くれ者のジョンがブランドンの正体を知り、とんでもないことをしでかしてしまう…って流れ。スウィートでロマンティックな前半から一気に地獄の後半になだれ込んでいく様子を見ながら、いちばん強く感じるのが、一般的に「普通」と考えられてるもの以外を、理由なく感情的に排除し破壊するのって、マジこの上なく身勝手なことだということ。それまでふつうに仲良かった人たちが一気にコロッと寝返ったりするねんけど、いやいや、性別の感覚がちょっとみんなと違うだけやん、それが露わになったからって本人の人柄が変わるわけじゃないし、自分との関係性も何も変わらん。けど、まったく正体不明の不気味なものに見えてしまうんやろーね。それが色眼鏡の恐ろしさ。けど、そうじゃない、そんなことにとらわれない人もいる。物事の表面を超えたところにある本質をちゃんと見つめられる人。この映画を観ると、どっちの方がより自然で、より価値的で、美しく、生産的か、一瞬で見て分かる。これぞ映像の力。とりわけママと呼ばれる人物はホントに訳わからん。アル中やからしゃーないのかもしれんが、場面場面でコロコロ人格が変化する。これは、根っこのない人間の典型。こういう人間がいちばん信用できない。映画としてすごいなと思ったのは、主人公ふたりの圧倒的な魅力と演技力。特に取り調べシーンのブランドンの演技は凄すぎて釘づけ! ラナはずっと最高です。クロエセヴィニーの魅力が爆発してる。そんなキレイなわけちゃうのにねー時々すげー美しく見えるショットがある。あと声が最高にイイ! 個人的にむちゃくちゃビックリしたのが、ピーターサースガード。この人ふつうにちょっとキモオタっぽいイメージしかなかったけど、こんなにセクシーなイケメンになれるんやね! 性格最悪やけど!笑 役者ってすごいなー! 全体として難があるとすれば、特に前半、かなーり長く感じてしまう。結構チャカチャカしてテンポもいい感じやねんけど。何故だろう。その理由をもっかい見て確認したい気もするが、面倒なのでどなたか教えてください。あと、テーマの割には、やっぱ全体的にノリが軽すぎでない? と思ってしまう。娯楽要素が強すぎるのと、人物描写にあまり深みがなく、ぎゃーぎゃー刺激となる部分が強調されすぎてる感じで、人物たちの心に若干同期しにくい。エモーションよりイデオロギーが先行してしまってる気がした。まぁ、そういうのが好きな人も多いと思うけど、僕としては少なからず気になった。テーマ的には好き系なのに、めちゃくちゃ好き!とまではならなかった。残念。いや、ぜんぜん面白いんやけどね!
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