凛太郎は元柚彦

グレイマンの凛太郎は元柚彦のレビュー・感想・評価

グレイマン(2022年製作の映画)
3.0
スパイ映画としては面白くないが、アクション映画としては秀逸な映画だ。
俺が求めるスパイ映画の絶対要素は主人公の〝生き様〟だ。組織に命や家族、人生を捧げ過酷な運命に奉仕し続ける物悲しい男の行動原理やバックボーンをどれだけ掘り下げてくれるか。スパイのミッションを通して主人公の人間性を浮き彫りにしてくれるスパイ映画が人々から愛され後世に遺る。ジェームズ・ボンドもイーサン・ハントもジェイソン・ボーンも然り。それが往年のスパイ映画の鉄則だ。
だが、本作は肝心の主人公の〝生き様〟には全くスポットが当たらず、ひたすら派手な映像表現と痛快なアクションシーンが繰り出される。主人公のシックスは仕方なくスパイをやってるただのユーモア色男。敵役もジョーク感覚で人を殺すようなただのイカレサイコパス。そのため、こいつらがピンチになろうが逆転しようが観客はいまいち感情移入できない。
だから、本作を見る上でおすすめの見方は疲れているときにポップコーンを買って脳死して見ることだ。
難しい人間ドラマは極力避け、大衆が理解できるストーリー展開が用意されているし、
5分ドラマを映したら10分のアクションシーンを流す、そうすることで観客がテンポ良く娯楽的興奮を味わえるというアクション映画の方程式をしっかりやってくれている。しかもアクションシーンはどれも徹底的に工夫が施されていて驚きの連続。アクション映画としては秀逸の一言である。
まさに近年のNetflixが作る「最高の暇つぶし映画」を象徴している一作だと思う。
ただ、やっぱりライアン・ゴズリングが主演のスパイ映画で、原作小説があって監督がルッソ兄弟ともなるとシリアスで重厚なスパイ映画を期待してしまわずにはいられない。最高に楽しめたけど、二週間で忘れる気がする。
大衆にはオススメできるけど、映画好きの玄人にはオススメできない類の映画だった。