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めぐりあう時間たちのbennoのレビュー・感想・評価

めぐりあう時間たち(2002年製作の映画)
4.2
ヴァージニア・ウルフ…大好きな作家のひとり。
"意識の流れ"という独自の文体で『ダロウェイ夫人』は何度も挫折…しかし彼女の『世界でもっとも美しい遺書』は私の心のお守りです🤍𓈒𓏸

モダニズム文学の女流作家。子供の頃に両親を次々と無くし、その頃から精神の病を患うように…同性愛者であり、フェミニストの先駆者でもあります。そして59歳、入水により自死…。


今作は時間軸の違う3人の女性のドラマを交差させ1つの物語を作り上げます…3人はそれぞれにパーティを開こうとします。

1923年…イギリスのサセックス、執筆中のヴァージニア・ウルフによって…。

1949年…ロサンゼルス、妊婦のローラが夫の為に…。

2001年…ニューヨーク、エイズを患った友人の作家の為、編集者のクラリッサ(・ダロウェイ)によって…。

 ‥‥共通点は小説『ダロウェイ夫人』……

ヴァージニアが執筆する主人公ダロウェイを投影したクラリッサ…そして『ダロウェイ夫人』という本を読む妊婦のローラ…という構図…。

とても印象的だったのは…ヴァージニアの夫が執筆中の彼女に「(本の中で)何故誰かが死ぬ必要があるのか?」と尋ねると彼女は…

“Someone has to die in order that the rest of us should value life more……It’s contrast.”
誰かが死ぬことで残された私たちは生の価値を実感する……対比なのよ…。

様々な死…その瞬間、何もかもが穏やかで全ての混乱から解放され救われます…と同時に何かが奪われる感覚…ただそれも一瞬…生きていたら、またあらゆる物事に押し潰されるのです。

3人の女性はそれぞれに生きづらい何かを抱え、自分の人生の選択を迫られます…そしてその選択の結果…また別の人生を生きづらくさせることに…。

とてもとても緊張感のある作品…何より3人の女優の演技が素晴らしい。ヴァージニアはニコール・キッドマン…特殊メイクを施しヴァージニア本人にそっくり、最初はニコールだと気付きませんでした。クラリッサは余裕のメリル・ストリープ…ローラはジュリアン・ムーア…彼女の演技が特に印象的です。

ヴァージニアの夫役のスティーヴン・ディレインの演技も素晴らしく、彼女を想う苦しい気持ちが堪らなく切なかったです。

また、フィリップ・グラスの音楽も女性の脆さや危うさと共鳴して見事…。

3つの別々のストーリーが最後に収斂する脚本はとても凝っていて、ラストには驚きも仕掛けてきます。
とても見応えのある作品でした…小説『ダロウェイ夫人』…今度こそ…読みます。


thanks to; のんchanさ〰︎ん✩°̥࿐୨୧
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