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めぐりあう時間たちのgenarowlandsのレビュー・感想・評価

めぐりあう時間たち(2002年製作の映画)
3.7
名女優たちの名演技は素晴らしいのですが、落ち込みやすい人が観るのは危険に感じます。ヴァージニア・ウルフの「ダロウェイ夫人」をモチーフにしています。抑鬱状態の女性が時代を超えて3人登場し、愛のジレンマに苦悩します。

ヴァージニア・ウルフ役のニコール・キッドマンはこの作品でアカデミー賞女優賞を受賞しています。作家リチャード(エド・ハリス)の元妻役のメリル・ストリープの演技はもちろんですが、母役のジュリアン・ムーアの演技はヒリヒリしていて名演技でした。



以下↓、内容に少し触れています。


戻らない過去の幸せと偽りの現在に挟まれ、希死念慮のある人たちが生と性と死の間で、苦悩から逃げる/逃げないと揺れ動く不安を描いています。

それに気づいた人がいても手を差し伸べられないのはそれだけ不安が大きく誰の手にも負えないように見えるからなのでしょう。

一緒に泣いてあげればいいのに、と思いました。腫れ物に触るような、無理解と、理性的受容と、一人前に扱わないこと。病んでいても別人になったわけではないのに。不安に揺さぶられ孤独なのに…感情の受容と共感を必要としているのに。潰されそうな不安を正そうとしてしまう。

愛する人の理想像に合わせて自分を押し殺してきたことにより、現実の自分を自分自身が受け入れられず、自身を拒否していることが描かれています。一緒に泣いてほしい人は愛する人なのに、愛するがゆえに相手を傷つけられず感情を抑圧してしまう。ジレンマに気づかれたくないジレンマ。

逃げた母をもつ作家のリチャードもまた苦悩から逃げようとしていました。

生きる苦悩と喪失の苦悩、連鎖する苦しみ、不安。愛があるゆえの苦悩。

名女優たちが言葉にできない、得体のしれない不安に押し潰されていく演技が凄すぎて、不安定なときは観ない方がよさそうです。
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