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めぐりあう時間たちのhanaのレビュー・感想・評価

めぐりあう時間たち(2002年製作の映画)
4.3
You can’t find peace by avoiding life.
人生を避けていては幸せを見つけられない。

初見では美しい映像、主人公3人の何処かミステリアスな性質、流れるように続く文学的な描写の虜となった。そこから10何年と観ていく内に、主人公の複雑な心理を読み解くスタートラインにやっと立てた気がします。

1920年代に小説「ダロウェイ夫人」を執筆中の作ヴァージニア・ウルフ、50年代の裕福な専業主婦ローラ、2000年代に出版業界で働くクラリッサ。時を超えた3人を繋げるのは「ダロウェイ夫人」のストーリー。

色とりどりの綺麗な花と迎える各々の朝の風景。しかし、綺麗な花とは裏腹に彼女達の心は危なっかしくて崩壊寸前。

作家特有の病み体質から抜け出せないヴァージニア。贅沢な悩みを誰にも打ち明けられず孤独なローラ。重病の友人を見舞う習慣から逃げ出したいクラリッサ。
表面的には現代人が抱える問題と然程の相違がないように思えるが、何度も観ていく内に彼女達が根底抱える問題はそう単純ではないことに気付く。

性のマイノリティーに属しながら、世間の批判や偏見に晒されるのを恐れてマジョリティーとして生きたい本音を葬り去れないヴァージニアの自戒、ローラの苦悩、クラリッサの葛藤の気持ちが一連の行動に繋がっていると思うと不思議と合点がいく。
ただ、これはあくまで無数にある解釈の内の一つで、何度も観て自分なりの解釈を見出した方が作品の本質に近付けると思う。

ヴァージニアの執筆次第でローラやクラリッサの運命が動き出す摩訶不思議さが心に新鮮な風を運んでくれて、いつまでも記憶に残ります。
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