NAO141

アキラとあきらのNAO141のレビュー・感想・評価

アキラとあきら(2022年製作の映画)
4.2
池井戸潤の原作小説を映画化したもの。池井戸潤作品で映画化されているものとしては『空飛ぶタイヤ』『七つの会議』『シャイロックの子供たち』等があるが、個人的にはこの『アキラとあきら』が現時点では一番好きかもしれない。といっても、やはり池井戸潤作品はドラマとして観たいのが本音。重厚な作品を2時間の映画にしてしまうとちょっと薄っぺらさのようなものを感じてしまうのだが、しかし本作はよくまとまっていたような気はする。

物語は父の町工場が倒産した山崎瑛(あきら)と大企業の御曹司の階堂彬(アキラ)という同名の2人がメガバンクに同期入社しライバルとなるが、日本有数の大企業である階堂彬の父の会社が倒産危機に陥る。その時この2人がとった行動とは!その奇跡の策とは!、といった話。

『アキラとあきら』は実はWOWOWでドラマ化もされており、その時の主演は向井理と斎藤工。本作の主演は横浜流星と竹内涼真。ドラマも映画もなかなか良くて、演者もキャラクターのイメージにはピッタリだと感じる。ただ、横浜流星が演じた階堂彬はだいぶトゲトゲしい感じ。ドラマ版で向井理が演じた階堂彬はもう少し物腰が柔らかくて、斎藤工演じる山崎瑛ともいい関係を築いていた印象。ところが映画版の階堂彬はややプライドが高く、山崎瑛のお人好しなところに食って掛かる少し尖った人物。個人的には向井理版の階堂彬の方が好きだな(まぁ、それは好みの問題だけど…笑)。
※ちなみにドラマ版・映画版共に、石丸幹二だけがまったく同じ役(階堂彬の父)で出演している。
※本作、主演の2人以外では不動役の江口洋介が良かったなぁ~。

本作はラストシーンが特に良い。2人は実は幼少期に会っている(町工場の機械等を押収する軽トラを追う山崎瑛は階堂彬を乗せた車に轢かれそうになり、これが2人の出会いとなる)。ドラマ版では成人した2人が割りと早い段階で互いに気づくが、映画版は〈宿命〉を強調してラストになって互いが昔会った事がある人物だったと気づく展開になっている。この部分は映画版の方がいいかな。ドラマ版・映画版それぞれを観て、その違いを楽しむのもなかなか面白い!

本作、何度か階堂は山崎に「山﨑は育ちがいいな」と言っている。御曹司は階堂の方なわけで、最初は皮肉を言っているように感じたが、この言葉は終盤に響いてくる。〈育ちがいい〉というと「何不自由なく暮らしてきた人」といったイメージもあるが、本作では山崎瑛を通して「人を救うために信念を貫く人」ということで語られている。山崎瑛のその擦れていなくて行動に一貫性がある部分に対し階堂彬は少し嫉妬していたのかもしれない。物語の最初と最後では実は階堂彬は変化している。けれど山崎瑛の方は変化していない。階堂彬が変わったからこそ変わらない山崎瑛の良さも映えるが、階堂彬のように踠き苦しみながらも自分を変えようとした生き方もまた美しい。
友、ライバル、宿命、運命、信念。
うん、良い作品だった!!

※個人的に思ったこと。かつて実写版の『デスノート』を観た時に面白かったものの「う~ん、でも夜神月のイメージは藤原竜也ではないなぁ」と思っていたのだが、自分の中では横浜流星が夜神月のイメージにピッタリな気がしてきたぞ!
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