千年女優

渇水の千年女優のレビュー・感想・評価

渇水(2023年製作の映画)
3.0
妻子と別居中の水道局職員で、日照りが続いて水不足が深刻化する夏に料金滞納者を訪ねては停水を執行する岩切俊作。父親が失踪して母親と二人の子供で暮らす小出宅訪問時に事情を慮って一度は延期をするも状況改善されず停止を決行した彼が、小出家の状況に自分の少年期を重ねて改めて自分の家族に向き合う様を描いたドラマ映画です。

相米慎二や森田芳光、本作にも出演する宮藤官九郎といった監督の下で長年に渡って助監督を担ってきた髙橋正弥が、白石和彌の企画プロデュースで河林満の芥川賞候補作品を映画化した作品で、育ちのトラウマによって合理的ながらも人間味の薄い主人公を生田斗真が演じ、門脇麦、磯村勇斗、尾野真千子、山崎七海、柚穂らが脇を固めます。

社会の生き辛さを綴った原作を物語だけでなくどことなく「キタノブルー」を思わせる青みがかった映像で描いて時代の雰囲気と共に継承します。一方で物議を醸した厭世的な展開の見直しは作品としての主題をぼやけたものにしていてありきたりな印象を抱かせることにもなっていますが、それでも人と人との繋がりの希望を訴える一作です。
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