Ricola

ミックステープ 伝えられずにいたことのRicolaのレビュー・感想・評価

3.6
2000年問題への漠然とした大きな不安が、社会全体を包み込むなか、両親不在の少女は過去に遡る冒険をすることで前に進んでいく。
少女の成長と、彼女とさまざまな人との繋がりが、爽やかなタッチであたたかな視点で描かれている。

「アンチ・マターズ」というレコード店で、音楽のみならず文化全般を愛する店主に協力してもらって、主人公の少女ビバリーは両親の残したカセットテープに入っている曲のラインナップをたどっていく。
ビバリーの両親からの彼女へのメッセージを徐々に紐解いていく。


ビバリーが曲を見つけていくうちに、今は亡き親のことを少しずつ知っていくことにもなる。この行動が自分自身の存在意義を見出すことに繋がり、ビバリーはだんだん自分に自信を持てるようになっていく。
さらに今までは祖母と二人きりの世界で生きてきたが、曲探しの過程で新しい出会いを経て、自分の世界が広がるとともに考え方においても刺激されることになる。

真上からのショットが多い。
ビバリーが友人のエレンと部屋で寝転がって音楽を聞いているシーンや、学校の階段でたくさんの人にまぎれているビバリーが映し出されるショットなど。

すぐ人は勝ち負けで判断したがるけれど、そんなものないというメッセージ性がガツンとくる。
未だに競争社会の意識の強い世界特にアメリカならではの、若者たちの背中を押すような優しくて元気がもらえる作品だった。
Ricola

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