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ハケンアニメ!のnamのレビュー・感想・評価

ハケンアニメ!(2022年製作の映画)
4.2
「人生を変えるアニメ作りにかけるアニメビジネスの舞台裏を描く群像劇」

Filmarks招待での完成披露試写会にて。

吉岡里帆さん、中村倫也さん、尾野真千子さん、吉野耕平監督、そして原作者辻村深月さんの舞台挨拶付き。

映画で原作者が登壇されるのは珍しいな思っていた所、製作スタッフとして辻村さんも参加されていたようで中でも劇中アニメの1クールの12話分のプロットを全部映る訳ではないのに書き下ろしたというのが凄い。

原作者の方も映像化に大満足なようでそれだけでまず信頼できます。

本編自体は予告の雰囲気的にはもっとコメディ寄りのお仕事ムービーかと思いきや、実際は組織や社会のしがらみの中で働く中での葛藤や苦悩を描くドラマだったのでアニメ好きの方ならずとも共感できるような作品だったのではないかと思います。

ストーリーとしては吉岡里帆さん演じる新人監督、そしてかつて天才と謳われた中村倫也さん演じるベテラン監督の対立を描きつつ、
近年でのアニメ作品の「映像研には手を出すな」で描かれたような"アニメーション作り"の大変さよりも、それを受け手に届けるという"アニメビジネス"の裏側という印象が強かったです。

そのため監督とタッグを組むそれぞれのプロデューサーの立場にもドラマがありました。

新人監督を押し上げ、あらゆるPRやらコラボでビジネスライクに突き進む一見冷酷な柄本佑さん演じるプロデューサー。そしてわがままなベテラン監督に振り回されるも、作り手達を守ろうとする尾野真千子さん演じるプロデューサーという関係性の違う監督&プロデューサーのバディをそれぞれの立場で群像劇として描いているので見応えがあります。

個人的にはアニメ業界ではなかったものの、映像制作の現場にいたのでベテランスタッフにお願いしたり、スケジュール調整のツラさやら監督のこだわりというワガママに付き合わされたりという共感できる部分も多かったです。

ただそんな中でもどんなスタッフ、立場であろうと"いいものを作りたい""観た人の人生を変える作品を作る"というものづくりへの想いや信念の描写には胸が熱くなるものがあり、後半ほとんど泣いていたような気がします。

メインキャスト4人以外のキャスティングやキャラがリアルでまたよかった。職人気質なスタッフ達とか本当にいそうな感じで作り込まれてました。

劇中アニメのクオリティもとても高く、わずか数分のシーンのためにアニメ作りのプロ達がキャラデザ、メカニックデザイン、作画などかなりこだわっているのが分かるクオリティでした。

お仕事ドラマとしても、アニメビジネスの舞台裏ものとしで幅広く楽しめるクオリティになってます。

またエンドロール後まで映像はあるので最後で席は立たずに!!
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