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マドンナのmaverickのレビュー・感想・評価

マドンナ(2015年製作の映画)
3.9
2015年の韓国映画。第68回カンヌ国際映画祭「ある視点部門」の正式招待作品。


絵に描いたような胸糞な話。登場する人物がことごとく糞野郎すぎる。韓国映画らしいテーマで構成されていて、社会格差や男尊女卑に嫌悪感を抱かせる内容である。人間の尊厳とは何なのか。それを考えずにはいられない。作品的には強烈で、この意義も分かる。でも露骨すぎだし、全体的な粗さも気になった。インディーズ的な作品でここまで攻めているのは凄いが、もっと上手く作れたのではないかなという印象だ。

主演は『ビー・デビル』のソ・ヨンヒ。この人も作品によって大きく印象を変化させる演技派な女優だ。本作では淡々としたクールな看護師を演じる。淡々とした中にも感情が見え隠れしているのはさすが。ただ、作品的な立ち位置のせいであまり目立たないのが残念。そのせいで中盤を過ぎるまで話もあまり頭に入ってこなかった。

話も中盤を過ぎた頃、臓器移植用にミナという脳死状態の女性が登場する。このミナこそが本作のもう一人のヒロイン。主人公はこの女性について調べていくうちに、彼女の壮絶な人生を知る。生まれの境遇と容姿のせいで酷い差別を受け続けてきたのだ。社会の底辺へとずるずると滑り落ち、壊れてゆく彼女の姿に胸が締め付けられる。このミナにフォーカスを当てた描き方はとても丁寧だった。監督が描きたかった部分はここなのだろう。言いたいこともはっきりと伝わる。ミナを演じたクォン・ソヒョンの演技もとても良かった。この役のために5kgも増量したとのこと。本作が長編映画デビューであるが、演技に対する姿勢は他のベテラン俳優にも負けていない。鑑賞後に彼女のインタビュー記事を読んで感動してしまった。その演技は大きく評価され、所属事務所のオファーも多数舞い込んできたそうだ。彼女の存在が本作の評価に繋がっているのは間違いない。『マドンナ』というタイトルは、ミナが周りにつけられたあだ名のこと。ミナは本作の主たる存在であり、それを堂々と演じたクォン・ソヒョンは素晴らしい。



胸糞描写が強調されているので鑑賞中はキツイ。だがこういう作品を通してこそ考えさせられることもある。そのことと、ミナ役のクォン・ソヒョンの熱演を評価して点数を加算したい。意義のある作品であった。
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