Jun潤

GHOSTBOOK おばけずかんのJun潤のレビュー・感想・評価

GHOSTBOOK おばけずかん(2022年製作の映画)
3.8
2022.08.06

2019年『アルキメデスの大戦』以来3年ぶりの山崎貴監督実写作品。
夏の映画といえば、近年では細田守、新海誠ですが、個人的には山崎貴も夏のイメージ。
監督が主とする昭和、アニメ、ファンタジーの内、今作はファンタジーで、2017年の『DESTINY』からさらに進化した新たな実写CG世界が見れそうな上に、キャストも少年たちに神木隆之介新垣結衣を加え話題性も抜群。

とある田舎町、一樹、太一、サニーの3人の少年は、町の外れにある祠にとある願い事をした。
その夜、「図鑑坊」を名乗る不思議な生き物が3人の枕元に現れ、願い事を叶えたければ古本屋にある「おばけずかん」を手に入れろと言った。
翌日3人が祠の場所に行くと、前日には無かった古本屋が建っていた。
3人と、彼らを追いかけてきた臨時のクラス担任・瑤子は、不思議な本屋の店主から「おばけずかん」を持ち去り店から出ると、そこは現実の世界ではない不思議な世界だった。
その世界でクラスメイトの湊に再会すると、元の世界に戻る手がかりを求め、「おばけずかん」を開く。
それは、少年たちによる命懸けの大冒険の始まりだった!

山崎貴ワールド全ッ開!!
かつて『寄生獣 完結編』では変貌した後藤の姿に『スパイダーマン3』のヴェノムの背中が見えましたが、今作ではまさか『エンドゲーム』の足の甲まで見られるとは。
これは大満足の極みですね。
夏休み時期で作品の雰囲気が低年齢層向けだったからか、子供だけのお客さんも多く、早い年齢の内から実写化作品に触れる機会があるというのはいいことですね。

『DESTINY』では黄泉の国という一つの別世界を創り上げた山崎監督でしたが、今作では現実に見えるけど現実ではない不思議な世界、それに加えて妖怪やお化けの類が存在するファンタジックなVFXを実現させていましたね。
いやしかしそれにしてもCGの出来がいい、邦画の中でも抜きん出ている。
背景や非人間の細部までの造形に加え、邦画や低予算映画にありがちな、背景と人物の合成が甘くCG感がバレている画などもなく、どうやって撮影しているのやら、どこからが現実でどこからがCGなのか分からない域にまで達していましたね。
とは言っても、予算などの制作の都合からか、カメラワークを上手いこと使い分けて、CGと人物が一緒の画面に入らない工夫が見え隠れする場面もありました。笑

ストーリーラインとしては、『映画 ドラえもん』やカスカベ防衛隊がメインの『映画 クレヨンしんちゃん』、あとはいくつかのジブリ作品にも見られるような、不思議な世界に迷い込んでしまった少年少女のジュブナイル・アドベンチャーといった感じ。
悪く言えばありきたりな設定で序盤の内から一樹たちの願いの内容は予想がつきましたが、良く言えば王道なので変に頭を使わされることなく、作品の世界観を120%楽しむことができました。
天パメガネの一樹、ヘアピンめっちゃ付けてる悪態付きの太一、黒人ハーフでチビデブなサニーに、可愛いヒロインや頼りない先生と、アニメ造形マシマシなキャラクターは活き活きと動いていましたし、太一の機転、サニーの孫力、一樹の役に立たなさを利用した作戦やいざという時の決断力など、それぞれの長所を生かした作戦展開も観応えがありました。

そして妖怪やお化けたちの造形がまたいい。
怖さや得体の知れなさも持ちつつ、ちゃんと愛くるしさや頼り甲斐もある。
釘宮理恵始めとした豪華声優陣を起用してのキャラ付けが見事に成功していましたね。
個人的には予告で見れなかった山崎組常連俳優の存在を探していて、ベテラン声優かと思ったジズリの声にまさかの田中泯さん起用。
エンドロールまで気付きませんでした。

役者陣もまたいい!
周りにいそうな普通な雰囲気を纏うことができれば、芝居がかった雰囲気を醸すこともできる神木隆之介に、『逃げ恥』以来2回目の派遣切りに遭う新垣結衣と大人キャストも安定そのもの。
ガッキーのキャラには大人の成長も含まれていてこれまたいいキャラクター。
そして城桧吏柴崎楓雅の見たことある子役に加え恐らくは映画初出演のサニーマックレンドン。
年相応の少年っぽさもさることながら、実際の撮影では目の前に存在しないであろうものに対する演技なども、子供だからこその想像力があってこそのものでしょうね。

店主のセリフから察するに、今作は「おばけずかん」という世界観の始まりな感じ。
今作のキャラに捉われることなく他の子役や大人キャスト、声優を変えていろんな妖怪やお化けを出せる設定ではあるので、ぜひとも続編制作、シリーズ化して欲しいですね。
Jun潤

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