いの

フェルナンド・ボテロ 豊満な人生のいののレビュー・感想・評価

3.7
フェルナンド・ボテロ。存命の方のうちで世界で最も有名な芸術家、ということのようですが、恥ずかしながら初知り。“ボテリズム”というのでしょうか、彼の描く人も物も膨張していて、いっかいみたら忘れられない作品となる。
予告篇観てわたしが描いたイメージは、“どんどん膨らんでいく幸せ”“多幸感”といったものだったけど、本篇みたら、そのイメージとは少々異なる印象を持った。彼の描く絵は、多幸感という言葉とはちょっと違う。その絵には、影がつきまとっているような気がした(気のせいかもだけど)(それに幸せというものにはもともと影がつきまとっているものなのかもしれないけど)。ユーモアや諧謔や風刺や哀しみや深みなど、いろんなものを包み込んでいる絵のように感じられた。だからこそ世界の人を魅了するのかもしれない。


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画家とその作品に関するドキュメンタリーをいくつか観てきて思うこと。
たいていのドキュメンタリーは、作家&作品を多くの人に知ってほしくて制作されているんだと思う(当たり前といえば当たり前ですが)。そしてたいていのドキュメンタリーは、作家の功績を時系列に並べ、そこに関係者へのインタビューを挿入して構成されていることが多い。絵画に関するドキュメンタリー制作の際、この王道で展開するのか、それとももっと違うものを目指すのか。当然、充分に吟味し検討したうえで制作されているんだと思うけど、でも、もうちょっとなにか工夫を凝らしてもいいんではないかい?と思ってしまう。今作に関して言えば、親族へのインタビューの割合をもう少し減らして、たとえばあるひとつの作品についてじっくり解説するとか、なんかそういうのがあってもいいんじゃないかと思ってしまった。このドキュメンタリーを通して、フェルナンド・ボテルという画家のこだわりや、魅力や寛容さなどは存分に伝わってきたからなおのこと、映画としての膨らみも欲してしまった(欲しがりすぎ)。
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