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RRRのAPlaceInTheSunのレビュー・感想・評価

RRR(2022年製作の映画)
3.6

先に『アフター・ヤン』を観て、その時から体調の悪さは感じていた。『RRR』観たいけど、寝不足としんどさで、帰ろうかとも迷った。でもせっかく時間があったので、行った。
『RRR』、超濃厚な映画だった。尚且つ、時間が179分もあるやん!!
どっと疲れた。そこそこ楽しくはあったけど。

179分、いっときも観客をダレさせないぞ、という作り手の熱意を感じた。アクションシーンは勿論、その合間の人間ドラマ部分の演出も濃厚。背脂マシマシ。
久々にインド映画を観たせいもあってか、面食らってしまった。映画を褒める時に『抑揚の効いた引き算の演出』なんて言葉を使ったりするのですが、この映画は引き算はせず『足し算、足し算、掛け算、足し算…』というような演出と展開。

一番楽しかったのはやはし、ダンスと格闘アクション。
まずはダンス。英国白人が、フラメンコや を踊りインド人には踊れまい、と傍若無人に振る舞う。ビームが愛する人の前でこれでもかと屈辱を受けた後に、親友の為にラーマがドラムを叩く。インド人の血が騒ぐビート。ナートゥ♪ナートゥ♪で二人は切れ味満点のステップで踊る。野性味たっぷり。民族の誇りもかけて。
(この展開は『イン・ザ・ハイツ』のラテンダンスバトルを彷彿とさせる)ラーマとビームのダンスに白人女性がまんまとメロメロになるのがカタルシスがあって良い。

アクション。冒頭から、ド派手なアクションで、かっこいい通りこしてずっと笑っちゃってた。格闘においては、トラと普通に戦うし、ラーマ。後々、トラヤヒョウなんかの動物ちゃん達を味方にした戦うし。バイクを持ち上げたり、なんでも武器にして戦うし。
序盤で、ビームとラーマが協力した川に落ちた子供を助けるシーンが最高だったな。『お前はバイクで、俺は馬で、このロープで、こうやって、。』って言葉なしてアイコンタクトだけで、え?どうすんの?と思ったら逆方向に走りだして、橋の両方から、ええええー-?
打合せ無しであれ出来る?? 逆に難しい奇跡的な救出方法じゃない??とかそんな突込みは心の奥にしまい込む。
ド派手で驚きがあってカッコよいアクションを追求したら、素敵すぎて笑ってしまうのか。

全て観終わってみると、あと30分、いやあと1時間短くしてみたらもっとタイトな傑作になったのではないかと思った。ただ日本以外では、途中インターミッション挟んで上映したいたらしく、それが正解だと思うし日本でもそうして欲しかった。

あとは、鞭打ちの拷問シーンが、しっかり残酷なのは良いとしても長過ぎたように感じる。ある種の残酷ポルノになってはいないだろうか??見ていて辛かった。ただこのシーンも(あるいは本作『RRR』全編を通じて)、世界中に植民地を築いて、各地で人種差別、どころか非人道的な振る舞いや、奴隷的な搾取を長年行ってきた英国への、屈辱の思いを映画に刻みこんだと捉えれば、何も言うべき言葉は無い。
もう一つ、女性の扱い方があまり好みではなかった。集団の為に立ち上がり戦うのは男性で女性は男性に守られる存在、というのが。機転を効かせて敵を欺くシーンは有ったけど、主体的に戦う自立した存在ではないので。まぁそれはインドの社会を反映したものだとも思うが。

一番苦手だったのは、最初から最後までずーーっと悪い奴がそのまま変わらず悪い奴で、キッパリ分かれた善悪二元論に終始してる点。
映画冒頭でスコット・バクストンの極悪非道ぶりを提示する。主人公達はこの長い上映時間で彼とその妻キャサリンへの憎しみを増幅させていき、作りが巧みなので観客も自然と共感していく。
あのスコット・バクストン画鞭を打つシーンを例にとっても、
《心の奥底ではインド人達への非道い暴力への逡巡や葛藤を抱えている。でもやはり彼もイギリスの植民地支配を任された役人で任務を遂行せねばならない…》といった心情描写があった方が作品として深みが増すし個人的にはその方が好み。しかし本作ではそうせず、憎悪が増していく作りにしている。
全世界的に、国民の過剰な分断が様々な面で悪影響を及ぼしている現在において有効な作品だとは思えなかった。
もちろんイギリスの植民地統治時代の圧政は非人道的な事があっただろうし、インドの歴史として残して置かなければならないのは理解できるが。


莫大は予算をかけた、桁外れのスケールの大きい映画の力を感じた。何かと人口減少が叫ばれる日本や欧米諸国からすると、場面いっぱいに人がいて、叫び、暴れるシーンにインドという国の底力を見せつけられた。
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