すずき

RRRのすずきのレビュー・感想・評価

RRR(2022年製作の映画)
4.5
時は20世紀初頭、大英鬼畜帝国の植民地のインド。
山奥の村に住む少女マッリの絵を気に入った総督夫人は、彼女を首都デリーの総督府へ連れ去ってしまう。
マッリの兄で勇敢な熱血漢ビームは、彼女を奪還する為、仲間と共にデリーに潜伏し計画を練る。
潜伏の日々の中、マッリはひょんな事から武闘派インテリの正義漢ラーマと親友となり、義兄弟の契りを結ぶ。
だが、ラーマは実は総督府の警察官で、総督を狙うビームを捜索していたのだ。
炎と水、相反する2人は互いの正体を知らず、親交を深めていくのだが…

「バーフバリ」のラージャマウリ監督の最新作で、インド映画史上最高制作額を誇るアクション超大作。
ラージャマウリ監督の作風は、圧倒的な「エモさ」。
今作も、真の友情と使命とに揺れ動く男たちを描き非常にエモい。
そして相反する2人の歩む道は、やがてインド独立解放の歴史へと繋がっていく…これは熱い!
こういう、男同士の友情×歴史物って、女の子が好きそうな題材よね。
「マガディーラ」の時から、監督の作品は女子受けが良さそうと思ってたので、女の子は食わず嫌いせずに見るべき!
劇中、インドのダンス「ナートゥ」をいち早く受け入れたイギリス女性たち(彼女達もまた、主人公たちと同じ抑圧された者達である)のように、この映画も日本の女子達の間で旋風を巻き起こしてほしい。

テーマがテーマだけに、プロパガンダ映画っぽい描写も多々。
イギリス人は鬼畜として描かれているが、まあ実際あの時代のイギリスは鬼畜だし…。
良いイギリス人も出てくるんだけど、彼女もビームに協力しすぎ、祖国を裏切り過ぎで、それでええんか、と思った。
彼女も、祖国のやり方に疑問を持っている、とかの描写がもう少しあれば良かったかも。

ラーマの生い立ちも、独立を夢見る革命家の父親に、愛情を注がれながらも「武器」として、少年時代から銃を手に訓練された、重すぎ&日本の倫理的に児童虐待でアウトなもの。
でもインドの歴史の中で、そうした非情さと暴力でしか得られない物があった。そして独立を勝ち取った彼らにとって、それは誇りなんだろう。
文化と歴史の違いに、他国がどうこう言う事ではない。
実写化も企画されている漫画「ゴールデンカムイ」のアイヌの少女・アシリパさんの生い立ちと被る。

アクションは相変わらず素晴らしく、2人の筋肉美がド派手にぶつかりあう!
炎と水、という2人の属性も要所要所で強調され、アクションの魅せ場のひとつひとつが絵になって、めっちゃカッコいい!
そのアクション描写は、前作「バーフバリ」に比べると、比較的おとなしい、と言うか地に足着いたもの。
例えば、序盤の数百人の暴徒の中に飛び込むラーマのシーン、ボコボコに殴り殴られながらも人々の間を縫って進む、泥臭い壮絶アクション。
これがバーフバリ王なら、おしくらまんじゅう状態になっても、「覇ッ!」と気合入れるだけで周りの人が数メートルぶっ飛んで、モーセみたいに道が出来るんだろうな。
まあ地に足付いた、とは言っても、本作でも片手でバイク持ち上げるくらいは普通にするんだけど。

しかし、クライマックスは「バーフバリ」の方が好きかな。
その理由は、一つは魅力的な悪役の不在。
バラーラデーヴァ的な、強力無比な悪のカリスマがいないのだ。
もう一つは、クライマックスにラーマが覚醒して、神の武器を持ち、シヴァ神のごとくワイルドな風貌へと変わる所。
ワイルドなのはビームで、貴公子なのがラーマ、というそれまでのキャラ立てに反するイメチェンが残念。
ビームの物語も存在も、ラーマに食われちゃうんだよなぁ。
それなら、ビームも覚醒して、何か神性を感じさせるイメチェンしてほしかった。
鬼神となったビームとラーマ、ふたりはクリシュナ!