Yoshishun

RRRのYoshishunのネタバレレビュー・内容・結末

RRR(2022年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

“リアリティーを排除した娯楽の究極系体”


……ついに観てきた。
SNSを中心に話題沸騰、日本ではインド映画史上最高の興行収入を記録中の本作。
伝説の二部作『バーフバリ』のSSラージャマウリ監督による、実在の革命家二人を題材にしたハイエナジーパワフルエンターテイメントだ。

表題にもある通り、本作は極力リアリティーというものが排除され、観客の想像の範疇を超える強すぎる画が連続する。例えば、序盤のマーラvs何千もの群衆という普通に考えてみればタコ殴りされて終了な構図ながら、ゾンビのような群れを持ち前の筋力と脚力で乗り切ってしまうのだ。その後、ビームによる虎との鬼ごっこという即死レベルのお遊戯が展開される。縄で捕獲した虎を縛り上げるために、巨大な爪に引っ掻かれながらも必死で抵抗する。一体何を言ってるのかわからないと思われるかもしれないが、本作で本当に描かれているものだ。

全編に渡ってこうした強すぎる画が続くものだから、鑑賞後の疲労感は計り知れない。しかし、鑑賞中は意外にももっと寄越せ!と言いたくなる程に映像の快感に浸るのみ。最高にハイってやつだ。少年救出バンジージャンプ、ナートゥというインドの自由意志が生んだ高速ダンス、最強すぎる肩車、バイクを片手でぶん投げる怪力、全てが名場面であり、どれも本作からは外せない異常すぎる熱量に満ちている。

しかし、本作は映像だけでない。
本作の時代背景は、大英帝国によるインド領侵略がある。ガンジーが現れる前の物語であり、まだ暴力には暴力で反乱を起こしていた時代である。奇妙な友情で結ばれていたラーマとビームでさえも、本来の関係性は敵同士。しかし、彼等の目的と信念、共通の敵が明らかになることで、一心同体で敵陣に乗り込んでいく。復讐に燃える2人の奇妙な友情物語は、当時の風潮を交えながらインド映画らしい大団円をみせる。非暴力が謳われる前のインド人の迫害からの反抗を、究極のエンターテインメントとして描ききった潔さ。銃殺する価値すらないと罵倒され続けたインド人達の逞しき物語に胸が熱くなる。

また、非情な時代ながらも劇中ではユーモアも忘れていない。特にビームと英国貴族の姪ジェニーとの恋愛模様が微笑ましい。ビームが一向に名前を認識しなかったり、言葉の通じない2人のすれ違いそうですすれ違わない会話劇も見所だ。

惜しいのは、ラーマの過去として、英警察部隊に潜入した部分がごっそり抜け落ちている点だろうか。そこが無くても映画としては成立するが、隊内の友人との関係性がイマイチ見えてこなかった。
また、ラーマの少年時代をはじめとしたシリアスシーンは映像的な面白味はあっても、少し真面目に作り過ぎていたようにも思う。15分に一度のペースでクライマックスが訪れるような作品であるため、余計に静かなシーンの地味さが際立っていた。


ラージャマウリ監督が4年の歳月をかけて完成させた執念の本作は、リアリティーは極力排除されたエンターテイメントの究極系体。3時間ずっとクライマックスという異常すぎるパワーと熱意に満ちた本年度最強のバディムービー。これが日本でも大当たりするのだから、日本という国も相当疲弊しきってるに違いない。日頃のストレスなど一気にふっとばすハイエナジーパワフルムービーは、戸締まりや黒豹以上に今秋必見の超大作だ。また本作も既に続編制作が決定しており、『バーフバリ』同様、1作目以上のとんでもない化物が誕生するかもしれないと思うと、期待しかない。
Yoshishun

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