moon

百花のmoonのレビュー・感想・評価

百花(2022年製作の映画)
3.5
記憶が有るから 悲しいのか

記憶が有るから 愛しいのか…

記憶…って これほど 不鮮明なモノはない

親子の間の記憶でさえ、自分が認識してる記憶が、そのまま 双方が同じだとは 言えないのだ…

それは ことある毎に感じている。寂しいかな…

私は物を捨てられない。その物に宿る「思い出」を 私は捨てられない…のだ。

そんな私には この映画はグサグサと刺さった。

けれど、…







[以下 ネタバレ有りの感想です]





映画の冒頭…古いが落ち着きのある整った室内に似つかわしくない一輪挿しの枯れた花…そこに流れるピアノの調べ…
百合子(原田美恵子さん)の 認知機能の異常さを 映像で見せているシーンは「ファーザー」を彷彿させたが、こちらは「怖さ」がなく、とても自然な感じで理解しやすかった。

とはいえ、実際、認知症になっている人が、どのような感覚でモノを捉えてるか…なんて、なってる本人しか解らないだろうし、それを説明した認知症の患者さんがいるのかな?…「ファーザー」の時もそんな事を思った💦…あくまでも、非認知症の者が、認知症の方を見て「想像」する症状(世界観)にしか過ぎない…と思う。

主人公の泉(菅田将暉さん)達が開発?してるAI歌手の歌声が、ちょっとゾッとするけど、惹かれてしまうくらい魅力的。
様々な情報(記憶?経験?)をインプット?して作り上げた「歌声」らしい💦
会議中の上司(北村有起哉さん)の台詞や 泉と同僚(岡山天音さん)のヒソヒソ話が、よく解らず、(字幕欲しい!)この先のストーリーに何か関係有ったかもしれなくて…残念。

百合子と泉のぎこち無い関係が、どうしてなのか? 時々、泉が記憶してる過去の映像が挟まる事で次第に彼らの わだかまりの正体が分かって来る…が…


百合子の逃避行にどうしても納得出来ず、泉が10歳くらいで、おばあちゃんに電話で助けを求められたから良かったけど…巷で時々有る、母親より女としての道を選んで 子供を死なせちゃった…的な事件を思い出し、嫌な気分に…

阪神大震災が起きるまでの一年間も放って置いて 震災で、息子を思い出す!?のは そこは母親だとは思ったけど…いや、虫が良すぎるよね?ちょっと取ってつけた感が…

その後、息子を引取りに実母(おばあちゃん)の所に行ったのだろうが、実母は 娘の行動をどう思ってたのかな?私が実母の立場なら、娘を許せないし 泉を母親(娘)に返すの心配で、嫌だけどな…
でも、泉には生まれた時から父親が居なかった…と言うから、結婚して生まれた子じゃ無かったのか、百合子の生き方に実母も諦め?て居たのか?その辺、全く描かれない(-_-´;) というか、一年も行方不明だった母親と その後も親子として暮らして来た?!事、大人になった泉が 母親に違和感?持ちながらも、心配したり、優しく接したりするのを見て、百合子なりに贖罪の気持ちが強く、息子を想い、料理もしっかり作るなど、息子を第一にして来たのは解った。

でも、泉は母親の失踪の理由を「ある時」まで知らなかったのだ‼️理由を知りたくなかっただろうし…そうでなくても、自分を一年間も放ったらかしにした事は許せない出来事で…でも、泉は本当に優しい青年だと思う。認知症になった母親の為に色々と尽くしている。そして、母親が自分(泉)
を忘れて行くことに悲しみを覚えている。

そんなある日、
「半分の花火が見たい」と百合子。

泉は妻(長澤まさみさん)に母親との事を打ち明け、花火の事を話す。何故 母がそんな花火を見たいのか?こころあたりのない泉。
妊娠中の妻(年上のしっかり者)は訳ありの親子である2人を丸ごと受け入れているのが素敵。
そして、妻が見つけてくれた「半分の花火」を観に出かけた親子。(諏訪湖の水上スターマインと思われる)湖面に咲く花火に喜ぶ百合子。泉は そんな母を見てホッとするも、すぐに百合子は
泉の事も分からなくなり、さっき観たばかりの花火さえ記憶になく、

「半分の花火が見たいの‼️」
と 必死に泣き叫ぶ…

「しっかりしてよ‼️」
泣きたいのは 俺の方だよ…と情けなく やるせない泉の落胆…
辛いだろうなぁ…

でも、ある日 偶然に

泉は知るのだ。
「半分の花火」の意味を…‼️

認知症で何もかも 自分(泉)の事を忘れていたと思っていた母が 忘がたい記憶として心に残していたのは、

泉と母二人で見上げていた かつての幸せな あの日の美しい花火だった‼️のだ。

忘れていたのは、自分の方だった!!!


泉は 母の自分への愛を やっと知るのだった。自分が泉なら 号泣するだろう…嬉しさと情けなさと切なさに…


百合子が 全て一輪挿しの花瓶しか持ってない意味。それは、泉が百合子に一輪のチューリップをプレゼントしてくれた事が、本当に嬉しかったから。それを忘れたくなかったからだと、私は思う。動物ビスケットの記憶も…そこは 母親としてとても解る。多分 子供の方は忘れているかもしれないけど。


ラスト …ビアノを弾き終え、何かを探すような視線の先に 百合子が見たものは…

泉の温かい眼差しだったのだろう。
母を心から赦し、愛を向ける息子の…




原田美恵子さんのラストの表情が 素晴らしかった…






[以下 雑感 & …]


あそこで終わって欲しかった…(ラストの花火シーンは蛇足感…)


作品が 言わんとする事は分かる気がするが、AI歌手の「記憶を詰め込んだ?ために失敗?」する?という辺りの 肝心の会話が よく聞こえず、「記憶」とは?の深みが ちょっと中途半端な感じになってしまった😓

それと やはり中高、大学生の頃の親子関係が.回想や会話の中でさえ全く描かれないのは不自然な感じがした…

そして、脇を固める役者が、名のある俳優達なのに、ほとんど ちょっと出で顔が遠くからで、とても贅沢(無駄使い)医師役の長塚さんは何故かモザイク?が入ってて どういう意味?ヘルパーさん役の ぼくもとさきこさんは 「GIVER」というドラマでハッキリと知った女優さんだが、チョイ役であちこち見かける…味の有る方だ。

今回の役はとても渋くかっこよかった永瀬正敏さん。いつも雰囲気の違う役で、本当に演技の幅が広いと感心する。
原田美恵子さんも 若い頃の百合子が 化粧のせいもあるかもしれないが、本当に若く見えてビックリ!!
長澤まさみさん 今まで観たどの出産シーンより 一番リアリティを感じられた!!
菅田将暉さん 早く 本当にお父さんになって。子役の赤ちゃんに懐かれてましたね!

「記憶」を無くしても 「愛」は残るという 人間の深いところの話だった。



記憶が無ければ 傷つかないのかもしれない…

でも…悲しくても 辛くても、愛しい記憶は 持ち続けたい…

そう 思っている。



けれど、大きな感動は 残念ながら得られなかった。もう一度 観たら、また 違うかもしれない…
moon

moon