スタッフロールから始まるのが何とも意味深。兎に角あくびが出る前半。画面分割による情報量の多さにも消耗させられる。個であるが故の分断、その上でどのように他と向き合うか。意外にも、終わりへ向かうにつれて引き込まれてしまった。その理由について考えてみると、作中に於いて、人生や映画、劇場を夢と関連付けて語るシーンが有る。内容については『場合によりけり』と思わせられる。ただ、この作品が創作によって現実を描き、普遍を静謐ながら強く提示することに起因し、そうした引力が発生したのではないか。また、起伏の緩い展開の中で、夫や息子の個人的背景が中々にスパイシー。そして妻の選択と、スライドショー。家とは何か。全ては空(くう)で諸行無常。ラストのカメラワークはそれを語るものだったのではないだろうか。
物を手放せない夫、あれは他人事と思えない。自分の遺品は、果たして誰が整理するのか。お洒落な一家で、服装や、その色について作り手の拘りを感じた。
場内で時に笑いが起こっていたのが意外。癒しのキキ。それ以外は、分からなくもないのだが。悲劇は喜劇といったところか。