井戸ヲ、ホルの作品情報・感想・評価

「井戸ヲ、ホル」に投稿された感想・評価

劇場未公開の短編。
青柳監督のドキュメンタリーは、始めに着想とメッセージ(メタファー)とゴールが明確にあって、それに沿って演出し(構図・タイミングなど)撮影されている印象を受けるので、個人的にはフィクション映画にのぞむのと同じ気持ちで観ている。
監督の柔和なキャラクターがその作為性をいい塩梅で包み隠しているのがよい。
カップ焼きそばの廃棄する湯でもう一度カップ焼きそばを作ろうとするくだりはいろんな説明を一発で表現していてうまい。
上映後、監督との懇談会で、監督の驚異的な記憶力に関するエピソードを聞いたのは、また別の話。
麻巳子

麻巳子の感想・評価

5.0

このレビューはネタバレを含みます

東中野のポレポレ坐で、「ひいくんのあるく町」と共に観賞。

青柳監督の「東京自転車節」はただただ自転車を走らせ「ひいくんのあるく町」はただただ町をあるき「井戸ヲ、ホル」はただただ穴を掘る映画。
だけど、おもしろい。
そしてやさしい。

アオヤギくんが友だちとわちゃわちゃしたり、わんの家に頭をつっこんで寝てたり、サイトウくんがギターひいたり、わんをなでたり。
掘った石を川に帰してあげる石にも優しい青柳監督が、サイトウくんが危ないと心配してくれているのに対して怒ってるアオヤギくんのシーンも好き。
結局、井戸の水は出てこないけど、なんかその先がある感じがする。

2021/12/4 映画チャイで再び観賞。

会場に行ったら青柳監督がひいくんと電話してるところに遭遇して胸熱。

チャイと監督も参加の座談会付き。
参加した人たちの感想がそれぞれでおもしろかった。
「モヤモヤが」っていう人がいたり「サイトウくんは穴を掘っていないのにさも働いたかのように監督と一緒にお風呂に入っているのはなぜ」という人がいたり。
ちなみにひろめのお風呂は無料で入れる公民館のお風呂だそう。

年末、お父さんから怒られるシーンは一度本気で怒られてへこんだあと、これは映像に撮っておかなくては、と思ってお願いしてもう一回怒ってもらったそうで、二人とも役者です。私は映画を観ながら本気で笑ってしまいました。

冒頭、青柳くんとサイトウさんがカップ焼きそばを食べるシーン(お湯がなくて監督の捨てるお湯をサイトウさんの焼きそばに入れる)は必要だったのか、という問いに「仲のよさと水がないという表現」とのことで、なるほどなるほど。

たぶんどの映画でもこまかく説明をしようとするとつまらなくなるし、こまかいニュアンスを省いてしまってもつまらなくなる。それをうまい具合に足したり引いたりするのも監督のお仕事なんだろうな。
青柳監督に「ただものじゃない!」と表現されていたかたに対して、監督がうつむきかげんに「ただの人です…」と言っていたのも印象深い。監督はただの人なのかもしれないけど、物の捉え方とか映画への執着がただものじゃないのかな。

上映前に「この映画は悪く言ってる人がいないので落ち込んだ時はツイッターで井戸ヲ、ホルの感想を検索して読んでます」と監督がおっしゃっていたので、観た人はよい感想をどんどんあげてほしい(笑)

あー、そうだ。「あのお風呂はどこの?」と聞いたら、青柳監督から「いい質問ですね」と言われたのが嬉しかったけど、「サイトウさん、おしゃれですよね?」という私の感想には「そう?」って言われて同意してもらえませんでした。

コロナ前の「井戸ヲ、ホル」からコロナの「東京自転車節」へ物語が続いているのかと思うと感慨深い。「東京自転車節」がDVDとかになったら特典でつけてほしいな。

監督が見た地底人の夢はどんなだったんだろう?
何となく言った叔父のひと言からはじまった井戸掘りドキュメンタリー。

監督自身は本作をモラトリアムだと言っていたけれど、掘りすすめた先に見えたものは…井戸だけに奥が深い。

鑑賞後の座談会もたのしかった。

青柳監督の構成力の素晴らしさと愛嬌のあるキャラクターとのギャップで、ドキュメンタリーってなんだろうって考えさせられてしまうことしばしば。

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