ぺん

こころの通訳者たち~what a wonderful world~のぺんのレビュー・感想・評価

4.4
高崎映画祭にて、監督やキャストの舞台挨拶付きで鑑賞したドキュメンタリー。
演劇に聴覚障害者向けの手話通訳を付け、更に手話の動作をも含め、視覚障害者向けに音声翻訳を付けるという試みが描かれます。
つまり耳の聞こえない人のための作品を、目の見えない人にも楽しめるよう仲立ちする様子も追っている。

そうそう、今作は「カメ止め」みたいな二重構造です。
知っておくと興味を惹かれると思う構成なので敢えてネタバレしてしまいますが、まず手話通訳付きの演劇に関するドキュメンタリーが始まり、エンドロールが流れる。
そしてそこへ更に音声通訳を施すまでのドキュメンタリーが新たに始まる。
最後に手話通訳、音声通訳、全部載せの映像、エンドロールが流れます。
これは凄い。耳の聞こえない人、目の見えない人、どちらにも通じる作品を作るための試行錯誤が短時間ではあってもダイレクトに伝わる。
この頃は手話通訳を盛り込んだ映画も増えていると感じるけど、今作はもう一歩踏み込み、目の見えない人にも通じる映像作品の作り方も考えさせられる。

今作の監督は「この世界の片隅に」の片渕須直監督を主役に描いたドキュメンタリー「〈片隅〉たちと生きる〜」を撮った山田礼於氏。
そして東京田端にある日本唯一の全席ユニバーサルミニシアター・チュプキが製作に携わっています。舞台挨拶には音声通訳とプロデューサーを手がけた、こちらの館長・平塚さんもおられました。
「障がい者のために、というより自分自身が映画に救われて映画が大好きだから、あらゆる人に楽しんで欲しい」
劇中でも真摯に情熱を語ってらっしゃいました。

また劇中で音声ガイド制作に協力した全盲の難波さん(盲導犬🦮ピース君も同行)は「この世界の片隅に」のユニバーサル上映にて、失明してから十数年ぶりに映画を鑑賞することができたという。
不安な気持ちになる昨今において、なんだか心の温まるエピソード。
またこういった試みがもう少しでも浸透すれば、障がいや特性の壁を越えて、様々な作品を共に楽しめる人が増えるんだろうなと思わされる。

劇場公開は今回が初だと仰っていました。一度では情報量が多すぎたので、また観てみたいな。
本公開は今年の夏以降のようですが、無事に全国公開が行われることを期待して。
ぺん

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