パグちゃんかわわ

ピンク・クラウドのパグちゃんかわわのネタバレレビュー・内容・結末

ピンク・クラウド(2021年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

スリラー映画と聞いて張り切って観に行ってきました!ピンクの雲が人類に襲いくるパニックホラー系なのかなと思っていたのですが、街を覆うピンクの雲は人類にのみ致死性があるらしく触れると10秒で息絶えるという設定は確かにホラーなのですが、雲はあくまで「そこにあるだけ」なので、家の中にさえ閉じこもっていれば脅威ではないため若干影が薄いです。家の隙間から入り込もうとしてきたりとか、そういう展開は全くないので雲による混乱や緊張感を求めて観ると何も起こりません!

むしろ外に出られない状況で社会性に歪みが生じてきたり、長い月日をかけてゆっくりと心が潰されてゆく行程を見ていくことになるのでスリラーというか虚しい気持ちになりました。

更に物語の主要人物であるヤーゴとジョヴァナのどちらの考え方や行動にもあまり共感ができなかったので、ほんとに他人の家庭内のいざこざをフラットに見続ける感覚がラストまで続いてそのまま終わりました。特に全く共感できなかった部分は、コロナ禍と違って家の外に一歩も出られない•医者も駆けつけることもできない状況で妊娠出産するのがあまりにも出産自体を軽く見すぎてる気がして理解できなかった。
これがお互い好きあっている2人なら全然分かるのですが元々2人は恋人同士ではない上にヤーゴと違ってジョヴァナは妊娠を強く拒絶していたし、子供を持たずに自由を謳歌したいと宣言していたのにそんな心変わりするか?と疑問でした。医学が相当進歩しても未だに出産で命を落とす女性は少なからず存在するのに、状況的にもそんな簡単に産める選択ができるんかと真面目に引いてしまった。
まあ映画なので何事もなくオンライン講座観ながら生まれましたが…。長い月日をヤーゴと2人きりで過ごす生活に、変化を求めたのかもしれません。でも結局はその行為すらも、彼女の心を救いませんでしたが。そこがまた虚しい。元々好きあった同士ならば、子供の存在は大きな希望で救いになったはずなのに逆に彼女を追い詰めてしまった。
そういう意味では、すごく残酷なお話なのかなと感じました。

人類を脅かす雲の脅威を期待して観に行くと全然違うので霧やら雲のことはあまり考えないで観たほうがよいと思います!PG12もおそらくほんの一部に投身シーンがあるせいかな?という感じで、ホラーよりお色気のほうが多いです(笑)
隔離された空間で擬似的に家族を形成してそれが崩壊していく様を、静かに見守る作品になっていると思います!正直雲やライフラインに対して突っ込みどころは多いのですが今作のテーマは雲の脅威ではないと思うので…気にしない!
あと2人が住む家の天井にヒビが入っているシーンがあったので、これはこの隙間からピンクの霧が入ってきてパニックが起こる前フリでは!?と期待して待っていたのですが何も起こりませんでした。どうやらヤーゴとジョヴァナの関係に亀裂が入ったよという暗示なだけだったようです。
スリラー映画はそうじゃないでしょ(怒)

あとヤーゴがピンクの雲が消えないように願っていた理由は、おそらくですがジョヴァナと違ってピンクの雲が発生する前の生活で彼は介護が必要で認知症を患っている父親の世話を引き受けて金銭的にもかなりの額を支援していたので
ヤーゴは自分を取り巻く現実の状況に、疲弊していたのだと思います。家に閉じ込められてからジョヴァナに子供を産んでほしいと説得するときのセリフにも、子供がいれば将来介護してもらえるし…と歪んだ発言をしてジョヴァナを怒らせていたので。
なのでピンクの雲の出現によって父親の介護や責任感から解放された彼が、このまま雲が消えないことを願うのは当然なのかなと個人的に思いました。
ジョヴァナは雲が現れる前は自由に旅行して現実世界を謳歌して生きてきたので、最後まで雲を受け入れることは無かったのでここも大きな作品のポイントだと思います。
子供は雲が現れる前の外の世界を知らないので雲があろうがなかろうが絶望を感じずに生きていけるので、父親の願いに同調してそれが母を追い詰める描写はきつかったです。
その部分がスリラーでした!

あとジョヴァナの妹さんが相当の胸くそ展開になるので、苦手な人はきついと思います。極限の環境に大人に洗脳されていく様はフィクションといえど吐き気がします。児童への虐待が少しでも地雷な方は要注意です(映像は一切ありませんがあかん人はあかん)
パグちゃんかわわ

パグちゃんかわわ