｢ごめんね｣と｢ありがとう｣が何度も交錯する尊い夫婦の絆。ずーっと同じ場所で笑い合い慈しみ合い愛情たっぷりの食卓を囲んできたかけがえのない時間｡娘が｢ただいま～｣と言えば､いつも両親のあたたかい笑顔と｢おかえり｣が当たり前のように木霊する 陽だまりのような安心感に包まれた家族の居場所｡
認知症が 朗らかだったお母さんを虚ろに覆い 日常が大きく変化しても､お父さんの大きな器が妻をしっかりと受けとめ さいごまで健気に寄り添う｡ふたりの深い愛の在り方が羨ましいほどに素敵で大切な愛おしい時間をおすそ分けして頂いたみたいに心が洗われた。
両親をレンズ越しに追い続けた監督のあたたかくも冷静なプロの視線｡重い荷物を抱え立ち止まる父の丸い背中､不甲斐ない自分を責め悔しさと情けなさが入り混じる涙に溺れていく母に ほんとは娘としてすぐにでも手を差し伸べたかったはず。時折彼女の溢れそうな感情が語りの声やカメラ越しに伝わってくるのが切ない。
お父さんの淹れるコーヒーの香り､季節が巡る度にもりもりと咲き誇る紫陽花の輝きは信友家の忘れられない大切な家族の記憶となるんだろうな。
一時帰宅した時の喜ぶお母さんの姿、お父さんの愛情が零れる別れの言葉､あそこほんとたまらなくて久しぶりに大泣きしました。
