近年で最も作品賞″らしくない″作品賞ではないでしょうか。
例年だと『イニシェリン島～』の方が作品賞映えするのだろうが、″家族愛″がテーマの今作(しかもSF！)が選ばれたのは、アカデミー賞を身近に感じる事ができる良い機会かもしれない。
とはいえ、わかりやすいネットニュースの見出しと今作の難解さとのギャップに面食らう人が続出するのも無理はなさそう。
活字にすると陳腐に感じてしまうほど、今作のカオス具合は底が見えない。
ある程度頭のネジを外す事が、今作を鑑賞する上で必要かもしれない。
「幸せとは？」「自分の存在意義とは？」、そんなこと考える余裕もない、貧乏暇なしなエブリン(演ミシェル・ヨー)は絶望していた。税金も払えず、国税局職員から威圧されるいまの人生。
そんな優しさの無い世界でも″優しくあろう″とするのが、エブリンの夫ウェイモンド。
キー・ホイ・クァン演じるウェイモンドが、このあたおか映画に赤い血を通してくれている。優しさだけが取り柄のような夫である彼が、最後まで誰よりも強い人だった。
クァン氏の演技は、大袈裟でなく芝居の神が降りてきているようだった。
(後半は、彼が微笑むだけで涙が出てきてしまうほど。もう完全に彼に心許していた。)
今作もA24お得意、何かの暗喩がたくさん盛り込まれていそうな様子だった。
マルチバースという要素は、無理やりこじつけるとしたら、インターネット社会と≒なのかな？(知らない人から狙われ、闘い、人生を奪われそうになる)
その他、様々な映画のオマージュも盛りだくさん。元ネタ探しをするのも楽しい。(オマージュというかもはやイジってるものもあり)
俳優達の演技、作品のテーマ、そしてカンフー！そしてポリコレ(ﾎﾞｿｯ)。
どれをとっても1級品と呼べる映画でした。
せっかくのマルチバースなので、エブリン、Avengersに加入どうですか？
あ、ダメだ、ミシェルさんシャンチー出てらっしゃいましたわ。
(いっそアース616じゃないって事にしちゃえばいいか！)
