めるち

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンスのめるちのレビュー・感想・評価

4.2
はぁー!面白かったー!
予想外にめちゃくちゃ泣いた。
予告が全くハマらなかったしB級映画っぽくて危うくスルーしかけたけど映画館で見て大正解。
愛と希望に満ち溢れた人生賛歌だった。
様々な要素がある作品だけど、『LIFE!』や『マイブルーベリーナイツ』、ロメール作品を見たあとの感情に近いもので満たされてる。

マルチバースやパラレルワールドを描いた作品はあまり見たことがないけど、これらのテーマは大好き。私自身よく別の次元について空想してしまうタイプで、「もしあのとき別の選択をしていたら…?」と考えることは少なくない。でも今さら選ばなかった未来にシフトチェンジなんてできないし、別の選択が上手くいく保証もない。それにどちらに転んだとしても結局自分は自分でしかないのだから、選んだ道や進まざるおえなかった道を正解に近付けるために頑張るしかないんだよね。
そんなこんなでマルチバースを想像しては覚悟を決めるの繰り返しだけど、この映画を見てさらに今を見つめて生きて行くことの大切さが身に染みた。

"世界は愛と無限の可能性で溢れてる"

作中の設定に当てはめて考えると、現世の自分にできなかったことは別の次元にいる自分が成功に変えてくれる。でもだからと言って今が悪いわけじゃない。ここにいる自分は別の次元にいる自分が望んだ姿かもしれないし、現状が永遠に続くわけでもないから。
何者にもなれない人の目の前には何者にでもなれる無限の可能性が広がっていて、自らの覚悟と決断次第で未来の形を変えていくことができる。

その上で忘れてはいけないのが愛や優しさ。
生きる上で必死になったり絶望したりする中でもきっと誰かが手を差し伸べてくれているはずなのに、その手を自ら振り払っているのかもしれない。結局いつも失って初めて気付くことばかり。
思いやりのある本心での対話を避けてきた主人公のエヴリンと自分が重なったからこそ最後の展開は胸にくるものがあったし、相手の意見を最大限に尊重しながらも自分の想いは素直にぶつけたいと思った。

私はずっと"愛とは与える側にしか分からないもの"と考え過ごしてきた。だけど与える側でも自らの行動が本当に愛なのかどうか理解できていないこともあって、それでも受け取る側が愛だと感じたらそれはもう間違いなく愛であることに最近気が付いたところ。
優しさから愛を感じるのであれば、世界はきっと愛で溢れてる。愛で世界は救えなくても、全ての人が優しさを持ち寄ればきっと何かが変わるんじゃないかな。私もギョロ目シールをあちこちに貼り付けて回る人間になりたいものです。

この映画を人生最大に絶望してブラックホールを作り出せそうな高校生の頃の自分に見せてあげたい。
まだ完全にニヒリズムから脱却できたわけではないし、むしろ年々その思想が強まってる気もするけど、それらを肯定した上で僅かな可能性や楽しみに少しずつ希望を見出していけたらなと思う。
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