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すずめの戸締まりのtdswordsworksのレビュー・感想・評価

すずめの戸締まり(2022年製作の映画)
4.2
日本全国に増え続ける廃墟や廃村、遺構を巡るロードムービーである。作中での草太曰く、人が去って「重し」を失った土地は霊界との境が不安定になる。(なるほど確かに、そういった場所に魑魅魍魎が跋扈するという伝承は多い。)土地の死を悼み、それを鎮めるために「戸締まり」をする。そういう筋の話なのだ。どれほどエンタメっぽくないテーマだろう!
新海誠監督が選んだこのテーマに、僕はもともと興味があった。使われなくなった工場の廃墟には無性に惹かれるし、全国の過疎地域で開催される芸術祭でかつての集落の痕跡を辿ったりするのもおもしろい。往時の暮らしに想いを馳せることで鍵穴が現れるという設定からは、主題に対する真摯な態度が見える。
新海誠監督は「君の名は。」「天気の子」と続けて災害を描いてきた。前者では災害を防ぐために奔走し、後者では災害を受け入れた。そして今作では、災害のあとを描いている。鈴芽の幼少期に起きたあの災害を真正面から取り上げ、その後に迎えた「未来」を生きる者にエールを送っている。
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