リミナ

夏へのトンネル、さよならの出口のリミナのレビュー・感想・評価

3.5
※原作未読

今を犠牲にしても取り戻したい過去とは。

本作は同CLAP制作の前劇場作品『映画大好きポンポさん』よりもさらに短い83分。良くも悪くも、物語の本筋には秘密を共有する主人公とヒロインの2人にしかほぼ焦点が当たらない。eillの挿入歌に乗せて同ポジなどを使いつつコンパクトに時間の流れを見せるシークエンスなどもあり、コンパクトな作り。

劇中の舞台はガラケー現役の2000年代。敢えて近代ではないことで連絡手段やウラシマトンネルでの調査方法の選択肢を絞らせてツッコミどころも生じにくくしたのは巧い。

映像面では全体的に動きとしての作画が劇場作品として突出しているカットは少ない。
本作の見所は、登場人物の心情や関係性を暗喩するような演出を田口監督作品らしい陰影のある撮影処理によって、悲哀的にも郷愁的にも訴え掛けてくる。だからこそ動きで目立たなくとも間が保たれる。

印象的な演出
・柱や窓枠を使ったフレーム内フレーム
・傘や向日葵越しで手を繋ぐリフレイン
・映る度に位置関係が変わる飛行機雲
・水族館の2匹の大型鮫
・ヒロインの長い髪によって目元口元が隠れるレイアウト

内容面は涙を誘う場面もあったり良い要素もある。だが、ただでさえ競合作品が多い夏×ちょっとSF×ボーイミーツガール。その中でやや埋もれてしまっている印象は否めない作品。惜しい。
リミナ

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