むらむら

ワンタンミーのむらむらのレビュー・感想・評価

ワンタンミー(2015年製作の映画)
5.0
今日2月1日はチャイニーズ・ニュー・イヤー。日本では「旧正月」。

中華圏ではこの旧正月で新年を祝うとこが多い。

新年にふさわしい作品として、Marrikuriさんがレビューをあげてて気になったこの「ワンタンミー」をチョイス。

「CROSSCUT ASIA おいしい! オンライン映画祭」で2月3日(木)まで無料視聴可能。https://crosscutonline.jfac.jp/

中年の雑誌記者が、シンガポールのホーカー(屋台)を訪問していく話。シンガポールに数年住んでたことのある俺、めっちゃ懐かしい風景すぎて今すぐシンガポールエアラインに乗りたくなった。

一応、編集部で若手女性編集者と話したり、引退する記者からビーチボーイズ「ペット・サウンズ」のCDをもらったり(何故にこのチョイス?)、アパートに帰って老いた父親に昔話をブツブツ独り言かまされたりしてるが、基本的には「シンガポール版・孤独のグルメ」って感じ。

監督のエリック・クーは「家族のレシピ」というシンガポールでバクテー(後述)とラーメンをマッシュアップした「ラーメン・テー」っていうレシピを作り出そうと奮闘する映画を撮ってて、シンガポール&フードに関してはお手の物。

この「家族のレシピ」主演は斎藤工で、他に伊原剛志や別所哲也、松田聖子も出てた。

余談だが、「斎藤工」の名前を見るたびに後ろに「口」をつけて「斎藤工口」と書きたくなる欲求を抑えられないのは俺だけだろうか。

「斎藤工口」と、脳内で変換するたびに、昔学食の黒板に「ちゃんぽん」と書いてあるのを「ゃ」と「ん」を消して「ち んぽ 」にするのが日課だった頃から、まるで成長してないような気がしてイヤになる。

ま、それはともかく、主人公はホーカーの色んなお店を巡り、店主にインタビューしてく。

頑なに一人で料理を作るオジサン。
「バナナの皮」を食器に使わないと嫌なんだ、とこだわりを見せる店主。
脱サラしてお店を始めた女性。
親を継いで二代目として味を守り抜く青年。
亡き父の残してくれたレシピを思って涙ぐむ青年。

小さなお店の一軒一軒に違ったドラマがある。

途中、日本の寿司屋で修行したという寿司職人の

「日本には日本の良さ。ローカルにはローカルの良さがある。とにかくルーツを忘れないことが大事なんだよ」

って台詞が印象に残った。

後継者問題や老朽化で、シンガポールのホーカー文化もいつかは消えゆくものらしい。シンガポールに数年間住んでた頃、毎日のように美味しいホーカー飯を探して彷徨ってた俺としては、とっても悲しいことなんだけど、だからこそ、こうやって作品として残してくれるのは嬉しい。

物語のラスト、父親と一緒に、旧正月を祝う主人公。

「魚生(ユーシャン)」という縁起物の刺し身の載ったサラダを、新年に食べるのがシンガポールの習わし。

サラダを混ぜるときに、みんなで箸をツッコんで、高く高く具を持ち上げるんだよね。その分、運気が上昇する、って。

この作品の親子はその儀式をやらなかったけど(理由もちゃんとある)、楽しい正月を、この「魚生」で祝ってたことを思い出した。今頃、シンガポールでは皆、サラダを箸で持ち上げてんだろうなー。ちなみに主人公がこの「魚生」サラダを出前したレストランの近所に住んでました(←自分語り)。

以下、おまけ。誰からも期待されてないと思うが、せっかく住んでたし、この作品に出てきた「シンガポール屋台料理」の中から、俺的ベスト5ローカル料理を挙げておきます。

ついでに、それぞれのお店の住所も書いておくので、コロナ明けてシンガポール行く機会があったらぜひ立ち寄ってみてください。

第5位 チリクラブ🦀
シンガポールといえば名物料理として出てくる代表的な一品。身が豊富なスリランカ蟹を、甘辛いチリソースで炒める。マズくはないが、日本から知人が来るたびに毎日食べてたので、正直飽きたというか、両手がハサミに、「ハエ男」ならぬ「カニ男」になるんじゃないかってくらいだった。個人的には同カニを黒胡椒で炒めた「ブラックペッパークラブ」の方が好み

第4位 チキンライス🐔
チキンを生姜やハーブで茹でて、その残ったお湯で炊いたご飯と共に食べる、もう一つのシンガポール代表料理。ケチャップはかかってません。安いとこだと300円、高いところだと2000円くらいする。味は大差ない。

第3位 フィッシュヘッドカレー🍛
インド人街「リトル・インディア」名物。バナナの皮を食器代わりにして、そのうえにライスやカレールー、魚の頭、漬物などを豪快に盛り付けて食べる。スプーンなど使わず、手で食べるのが本場流。俺もシンガポールでは手で食べるのに慣れてしまい、日本戻ってカレーを手で食べてたら、店員からキモがられて悲しい。

第2位 牡蠣オムレツ🥚
フツーにオムレツに牡蠣を入れただけのシンプル料理だが、パリパリと硬く焼いたオムレツに挟まれた、とろけるような牡蠣がとってもジューシー。牡蠣オムレツをつまみにホーカーで飲むタイガービール(シンガポールのローカルビール)の美味さたるや、最高以外の何物でもなかった。

第1位 バクテー🍜
そして俺的シンガポールローカルフード一位に輝くのは、この「バクテー」。中国語で書くと「肉骨茶」。ブタのスペアリブを薬膳スープでトロトロに煮込み、ご飯と一緒に食べる。字面はオドロオドロしいが、コショウのピリ辛とダシの効いたスープが筆舌に尽くしがたいほど上手い。このスープの美味さは、海原雄山も土下座するレベル。シンガポールにいた頃は毎週1回は食べてた。今回の作品に出てた店が一番美味しいと俺も思ってるので、シンガポール行くことがあったらぜひ立ち寄ってほしいです。

【作品に出たホーカーの住所一覧】

※シンガポールは狭い国なので、建物1つ1つに郵便番号が付与されている。なので、究極言うと、「Singapore 208805」の、「208805」って番号さえ分かればお店に辿り着きます。(豆知識)

順番は登場順。

🍽️チキンライス
Hainan Chicken Rice Ball
49 Jln Besar, Singapore 208805

🍽️フィッシュヘッドカレー
Samy's Curry
25 Dempsey Rd, Singapore 249670

🍽️バクテー
Outram Park Ya Hua Rou Gu Cha
7 Keppel Rd, #01-05/07 PSA, Singapore 089053

🍽️チリクラブ
Roland Restraunt
89 Marine Parade Central, #06-750, Singapore 440089

🍽️フライドホッケンミー
Geyland Lorong 29 Fried Hokkien Mee
396 E Coast Rd, Singapore 428994

🍽️オイスターオムレツ
Green Sky Oyster Omelette
No. 1, Bedok Road, #01-14, Bedok Food Centre, Singapore 469572

🍽️寿司
達屋
22 Scotts Rd, Singapore 228221

🍽️チャークイティオ
Hill Street Char Kwey Teow
16 Bedok S Rd, #01-41, Singapore 460016

🍽️バクチョーミー
Teochew Street Mushroom Minced Meat Noodle
335 Smith St, #02-023, Singapore 050335

🍽️ナシレマック
Selera Rasa Nasi Lemak
2 Adam Rd, #01-02 Food Centre, Singapore 289876

🍽️新年の魚生(ユーシャン)
RED STAR RESTAURANT
54 Chin Swee Rd, #07-23, Singapore 160054

というわけで新年快乐!(新年あけましておめでとう!)🎍🎍🎍

ちなみに今日限定で、「旧正月」とグーグル検索すると花火があがる。グーグル、粋だねぇ。

(おしまい)

※追記 他の方のレビューでラストに映っている女性がナスターシャ・キンスキーさんだということを知りました。なんで出てたんだろう……!?
むらむら

むらむら